外商投資規制における各種業界の位置づけ

 こんにちは、中国・上海の田中勇です。本日は、「外商投資規制における各種業界の位置づけ」と「それぞれの位置における成功企業」をご案内します。

 中国の市場を読むことは非常に難しいと言われています。なぜなら、様々な要因が複合的に関連しあって市場が形成されているからです。主な要因は、外資規制、地域特殊性、世代間格差、所得格差等です。外資規制については、製品市場参入の制限【参入の制限】と持ち分割合の制限【所有権の制限】があります。表にすると以下の通りです。

※上記の表は、外資規制の全体像を把握するために、非常に簡単に示したものです。詳細な規制については、外商投資産業指導目録及び関連規定をご参照願います。

上記の表の内、自社がどこに位置づけられるのかをまず知る必要があります。位置によっては、市場の状況が異なり、注意すべきことも違うからです。

【参入の制限】と【所有権の制限】が共に厳しい場合(図の左下)は、外資企業は本格的な事業展開ができません。例えば、中国国内企業の通信企業(中国移動、中国網通、中国聯合)への外資企業の資本参加においては、未だ約3~7%です。中国電信については、外資の資本参加を認めていません。しかしながら、このような状況においてでも、自ら事業展開ができないという事実を受け入れたことによって、利益を上げた企業があります。例えば、図のセクターの位置とは異なりますが、2005~2006年にかけて、世界の金融機関が中国国営銀行(中国銀行、中国工商銀行、中国建設銀行等)に投資しました。中国国営銀行の海外上場を見込んでの投資だったのです。結果的に投資をした金融機関は、莫大な利益を得ました。例えば、RBS(Royal Bank of Scotland)は中国銀行に15億ドル投資して、その有価証券を24億ドルで売却し、大きな売却益を得ています。

【参入の制限】と【所有権の制限】が比較的厳しい事業(図表中央)においても、厳しい条件のもとで適切なパートナーを見つけ、成功している企業もあります。例えば、ベネッセコーポレーションは中国福利会出版社(上海)と組むことにより、合弁先の企業の持つ販売網を利用することで、現在では上海で代表的な通信教育企業になりました。警備会社のセコムは、1992年に投資性公司としていち早く北京に進出し、政府と良好な関係を構築。95年にはセキュリティビジネスを開始し、現在中国で一定のシェアを確保しています。自動車製造企業にもたくさんの参考になる企業があります。(ホンダ、上海GM等)

【参入の制限】と【所有権の制限】が緩やかな事業(図表右上)は、規制の制限はほとんど受けません。ところが、世界中の競合が集まる厳しい状況になります。市場調査等をしていると、アメリカ・韓国・台湾等の企業が競合企業としてあがってきます。また、世界の企業だけでなく、中国企業も侮れないのです。低コストで模倣製品を作る企業がいることです。(山寨企業shanzhai)山寨企業の代表的企業が非常可楽(フゥーチャーコーラ)です。コカ・コーラの味に似た(中国人の趣向に合わせた)炭酸飲料を地方都市中心に販売したのです。を中国で炭酸飲料3位のブランドにもなりました。北京天宇郎通通信設備も同様に大手携帯電話メーカーが見過ごしていた3,4級都市に住むローエンド製品利用者に他社に非常に似た製品を販売しているのです。さらに、注意すべきは、中国政府より支援を受けている中国企業です。例えば、ハイアール、レノボ、TCL集団股份有限公司等です。これらの企業は政府等からの支援により、研究開発や投資等に有利に行えます。
このような山寨企業が多く存在する業界においても成功している外資企業はあります。例えば、アップル、ハネウェル、トヨタです。アップルのアイフォンの模倣品は数多く存在しますが、アップルが行う顧客サービスと通信接続性は追随できる企業はいません。自動車部品や電子機器を製造するハネウェルについては、中国で新製品開発・製造・販売をすべて中国で行い、ローエンド市場に合った製品群を揃えました。トヨタにおいても中国におけるサプライチェーンを構築し、偽造部品問題を解決しました。

以上

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