中国を31国として見る(成功企業の特徴)

 こんにちは、中国・上海の田中勇です。本日は、中国を31国として見ることで、成功している企業をご紹介致します。

中国市場の難解さの原因として、地域特殊性があります。例えば、言葉(広東省の中には複数の方言があります)や食べ物の趣向は各省で違いますし、沿岸部と内陸部では消費者の求めるものも異なります。したがって、外資企業の多くは、下記3つの地域に標準を絞り、製品販売をしています。

・渤海沿岸地域。北京・天津を中心とするこの地域の人口規模は約2,500万人、GDPは2,900億ドル(2兆元)です。同規模の経済地域としては、アイルランド、南アフリカ、アメリカメリーランド州があります。
・揚子江デルタ地域。上海を中心とするこの地域の人口規模は8,000万人超、GDPは約6,600億ドル(4.5兆元)です。同規模の経済地域としては、トルコ、ポーランド、アメリカイリノイ州があります。
・珠江デルタ地域。広州と深圳を中心とするこの地域の人口規模は4,500万人超、GDPは3,650億ドル(2.5兆元)です。同規模の経済地域としては、ギリシャやアメリカマサチューセッツ州があります。

以上のように標準を絞る理由としては、主に三つあります。以上の3大地域で中国のGDPの約半分を占めること。人口一人当たりのGDPが比較的高水準であること(5,000~6,500ドル)。他の都市にも一人当たりGDPが高いところがありますが、分散しすぎています。

ところが、現在の3大地域の中国においては、あらゆる製品が飽和状態になってきていると言われています。例えば、衣料、家電、車等です。アディダスにおいては、2007年から1~3類都市のスポーツ製品売上高が減少してきています。家電小売チェーン店である蘇寧雲商集団(中国家電市場において資産総額No1)の大都市を中心とする既存店売上高は、2006年以前は増加傾向にありましたが、2007年以降は減少傾向にあります。あらゆる自動車メーカーの中国大都市における売上増加率も2006年を境に鈍化してきています。

ここで、競争が激しく、製品・サービスが飽和状態にある1~3級都市が集まる三大中国市場地域以外の、4級以下の都市にも進出する企業が増えてきています。中国の都市化も影響し、三大中国市場地域以外の地域が魅力的になってきたのです。そして、成功外資企業も出てきました。例えば、アディダス、KFC、コカ・コーラ、P&G等です。

売上高の8%を中国で捻出しているアディダスは、中国全土の小売店を再編しました。以前新規出店における出店比率は、1~3級都市:4~7級都市=6:4でしたが、現在では4~7級都市の比率の方が多くなっています。さらに、中国人の趣向に合ったファッション性のある製品を販売することで、2012年度の対中国売上高は前年比15%増を記録しました。コカ・コーラは中国各省・各地域の様々な企業とボトリング契約を結び、2~4級都市へ販売しています。KFC、P&Gも同様に無数の地方の物流網を築き、販売しています。これらの企業の特徴は、他国では外注するのが一般的な物流業務について、自社で行っていることです。中国の物流業界においては古くからの風習が色濃く残り、関係(グアンシー)が大きな影響を及ぼすファクターで、そのような関係の構築や関連ノウハウを自社で育てるという姿勢が重要であると言えるのです。そしてそれらの企業は、中国を一国として捉えているのではなく、各省・各地域の風習を尊重し、データを蓄積し、対応しているのです。

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