こんにちは、中国・上海の田中勇です。本日はクロスボーダーM&Aに関わる税務処理についてお話します。
日本本社A社が中国子会社(C社)を日本の第三者(B社)に持ち分譲渡し、現金を受け取る場合、どのような税務処理になるのか、というお問い合わせをうけることがあります。中国側と日本側での処理について、以下の通りご案内致します。
まず、中国側では、A社は売却益に対し、企業所得税(10%)が課税されます。これは、中国国内にある企業の持ち分譲渡による所得は、中国国内の源泉所得税であるという考え方があるためです(中国企業所得税法3条、中国企業所得税法実施条例7三)。
次に、日本側でも、A社は売却益に対し法人税(35%前後)が課税されます。ただし、中国で支払った企業所得税を日本で支払うべき法人税額から控除することが可能です(法人税法第95条《外国税額控除》)。
なお、今回の取引が現金による持ち分譲渡ではなく、株式による持分譲渡であれば、適格組織再編税制の適用される可能性もあります。適格組織再編税制が適用された場合は、日本においては、課税の繰り延べ処理が可能になります。ただし、適格組織再編税制の適用要件として、組織再編後も事業の関連性を維持する必要がある等の多くの要件があります。
以上