世界シェアトップの日系企業から学ぶ企業戦略③

 こんにちは、中国・上海の田中勇です。本日も、世界シェアトップの日系企業から学ぶ企業戦略についてお話します。

 今回は、世界シェアトップの日系企業の特徴3つ目である、③リスクに備える について詳しくお話します。

 ③については、トップシェアを維持できなるリスクに対して、主体的に対応していることを意味します。具体的にリスクとは、技術的キャッチアップの早い中国・台湾・韓国等による低価格製品の登場(例、カーナビ約20万円⇒PND約3万円)、代替技術の登場(例、ガソリンエンジン⇒電気エンジン)、規制・規格の変化(例、電子部品の規格の変更)があります。

 これらのリスクに対しては、それぞれ対策があります。低価格製品の登場リスクについては技術のブラックボックス化、高付加価値セグメントのみに集中すること。代替技術の登場リスクについては、コア技術を維持し、事業の基軸を他事業へ活かすこと。規制・規格の変化については、政府機関を巻き込む等して、積極的に業界全体を主導することが挙げられます。

 具体的に実践している企業を上げると、低価格製品の登場リスクについては、キャノンは日本(主として大分)に製造拠点を集中させ、技術のブラックボックス化及び機械化を進めています。代替技術の登場リスクについては、液晶ディスプレイに使用される偏光層保護フィルムの世界80%を占める富士フィルムは、写真フィルム事業で培った技術を他事業へ活かすことで、あらゆる事業で世界に認められる企業になっています。一方、一時期は写真フィルムの2大企業の一つであったコダックは事業の基軸を他事業へ変換しきれずに、2012年に破たんに追い込まれました。内視鏡分野で世界シェア75%を占めるオリンパスは、当初の強みであったカメラレンズの技術を応用し、現在の地位を築いています。規制・規格の変化のリスクについて、あらゆる電子部品で世界トップシェアを誇るアルプス電気は、電子機器用スイッチ等の規格策定会議の議長を務め、積極的に規制・規格の変化に対応しています。炭素繊維(航空機等に使われる軽くて丈夫で腐食しない先端機能材料)では、東レ、東邦テナックス、三菱レーヨンの3社で世界シェア70%以上を占めています。日系企業が世界シェア首位を維持している最大の理由は、炭素繊維技術が産官連携で長期に研究開発が進められて来たものだからです。強度の測定方法の規格化・材料の標準化を官民一体で自ら行うことで、炭素繊維の信頼性を高め、他の国よりもいち早く炭素繊維の産業化に成功したのです。

 現在トップシェアを維持している企業の中でも、③つ目の特徴を実践している企業は非常に少ないです。継続的に世界シェアトップを維持するには、③つ目の対策が非常に重要であると言えます。

以上

【参考】

http://www.jisc.go.jp/policy/kenkyuukai/chizaiwg/swg1jireisyuu.pdf
http://j.people.com.cn/94476/8388247.html

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