ベトナムにおける移転価格税制に関して

税務

 

お世話になっております。

TCFベトナムホーチミン拠点の石川です。

 

今週のブログは、“移転価格税制”というテーマで、記載していきたいと思います。

 

■移転価格税制

移転価格税制とは、関係会社間での取引における取引価格を通じて、その所得を国外に移転することを防止するために定められている税制です。

取引上の価格設定については、企業の自由意志に委ねられることが自由取引の大原則です。

ただし、企業グループ内での取引価格を調整することで、結果として税負担を自由に軽減することが可能になるとすると、価格設定を変動させることにより各国の税負担を恣意的に操作できることになります。

国外への所得移転を回避するためには、関連会社間の取引価格と独立企業間の取引価格が異なる場合に、独立企業間価格に基づいて所得金額を算出して課税します。

2017年5月よりDecree 20/2017/ND-CPが適用されています。ベトナム投資を行う多国籍企業及び海外投資を行うベトナム企業は、移転価格税制に対して慎重に対応し、どこで経済活動を行い価値が創出されるかに留意し新規制に備える必要があります。

 

■3層構造の移転価格文書

Decree 20/2017/ND-CPより経済協力開発機構(OECD)の税源浸食と利益移転( Base Erosion and Profit Shifting (BEPS) ) の行動 13 の適応及び実施を含み、下記の 3 層構造の移転価格文書が規定されました。

 

  1. マスターファイル:多国籍企業グループの全体像に関する資料
  2. ローカルファイル:ローカル納税者の関連者間取引に関する詳細な情報に関する資料
  3. 国別報告書 (CbCR):多国籍企業の経済活動の所在、所得、納税額等に関する資料

 

決算日以後90日以内に、各事業年度の法人税の確定申告書とともに指定様式を用いて申告しなければなりません。また、税務当局から移転価格文書の提示を求められた場合には、税務調査による場合には15営業日以内に、それ以外の場合には30営業日以内に提出しなければなりません。つまり、税務当局の通知を受け取る前に移転価格文書を整備しておくことの必要性を強調する規定となっています。

 

*移転価格文書はベトナム語での作成・保管が求められています。

 

■国別報告書

国別報告書の内容としては、国際的なグループが事業活動を行っている管轄ごとの、グループの主要な財務・税務指標(売上、利益、未払税額、従業員数、資本金及び有形資産の額等)が含まれています。

 

Ø  納税者がベトナム国外に最終親会社を有している場合

海外の最終的な親会社がその居住国において国別報告書を提出・保管する義務がある場合ベトナムの納税者は国別報告書を提出する必要があります。

もしくは、ベトナム税務当局に国別報告書を提出しない場合、納税者は書面で説明資料を提出しなければいけません。

 

Ø  最終親会社がベトナムの場合

ベトナムに最終的な親会社が存在する場合でかつ、連結売上高が 18兆 VND(約789百万USD) 以上となる場合には、当該報告書を提出する必要があります。

 

■移転価格に関する免除規定

移転価格文書の作成について、一定の免除規定を設けています。

特に、下記の場合において、納税者は移転価格文書の作成が免除されます。

 

Ø  売上高が 500億VND(約2百億USD) 以下であり、かつ関連者との取引が 300億VND(約1百万USD) 以下である場合。

*しかし、移転価格文書の作成免除が、もし独立企業間価格で取引していることを証明できなかった場合に、移転価格課税されないということを示すのか、移転価格に対する税務調査が行われないということなのかが不明確となっています。

 

Ø  納税者の事業内容が単純かつ売上高が 2000億VND(約900万USD) 以下でかつEBIT (支払金利前税引前利益)÷ 売上高が下記を上回る場合。

販売業:5%

製造業:10%

加工業:15%

*EBIT ÷ 売上高 ≧ 販売業5% 製造業10% 加工業15%

 

Ø  事前確認制度の合意書(Advance Pricing Agreement (APA) )を締結しており、APA に関する年次報告書を提出している場合。

*APAでカバーされていない関連者間取引に関しては、納税者は前述の移転価格文書の要求事項を遵守する必要があります。

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東京コンサルティングファーム・ホーチミン拠点
石川真睦

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