こんにちは、ホーチミン事務所の嶋航です。本日は、ベトナムの就業規則について記載します。
日本では10名以上の労働者を雇用している事業所の場合、労働条件や服務規定など会社と従業員の決まり事を就業規則によって明文化することが義務化されております。会社は就業規則の公布後、10日以内に所轄の人民委員会労働局に届出をする必要があります(労働基準法第120条)。所轄の労働局にて受理されれば、その15日後より、効力が発行することになります。就業規則の未作成・管轄の労働局へ未登録の場合、500万~1,000万VNDの罰金が科せられることになります(95/2013/ND-CP)。
就業規則の記載内容としては、労働法により下記の項目を記載しなければならないとされています。
1. 勤務時間と休憩時間
2. 職場における秩序
3. 職場における労働安全・労働衛生
4. 雇用者の資産、経営・技術上の秘密、知的所有権の保護
5. 被雇用者の労働規律違反行為、労働規律処分の形式、物的賠償責任
上記絶対的記載事項の他に、就業規則に規定する項目の一般的なサンプルとしては、下記が挙げられます。
【就業規則の規定例】
【就業規則の規定例】
1.総章及び、定義
2.従業員の分類及び、グループ分け
3.雇用、採用、移動及び退職
4.勤務日、勤務時間、休憩時間
5.休日及び、休日に関する規定
6.休暇関する内容
7.時間外勤務及び、休祝日に関する規定と、給与の支払い
8.福利厚生及び、表彰等
9.業務遂行規則と、規則違反の処罰関係
10.苦情申し立て
11.業務における安全性と自己防止関係
12.社員資格の喪失関係
13.出張規定
14.社宅規定
また、労働者が10名以上の企業は、雇用保険の加入義務は生じます。雇用保険の加入要件は、就業規則の人民委員会労働局への登録が完了していることになります。よって、雇用保険加入のためにも就業規則の作成・登録は企業及び労働者にとっても非常に大切なものとなります。
労働者が10名未満の事業所でもあっても、雇用関係を明確に定めておくことは労使関係を円滑にするためにも必要となります。人民委員会労働局に登録する就業規則はベトナム語にて作成されなければなりませんが、ベトナム語及び日本語若しくは英語の二ヶ国語で作成されることが一般的となります。2ヶ国語間の翻訳の解釈に齟齬がある場合、公的な機関、人民委員会の調停若しくは裁判等を行う場合にベトナム語の解釈が優先されるため、ベトナム語及び日本語又は英語の翻訳の解釈等に十分に留意する必要があります。
また、就業カレンダーや休日、有給休暇の管理をする際には、日本のベトナムの違いに留意する必要があります。ベトナムでは、労働法で週の法定労働時間の上限が48時となっており、現地の特に製造業では、土曜日も営業日であることも多いです。
そのため、有給休暇や傷病休暇の取得率は日本と比較すると高いようです。たとえば、日本人の場合、企業の繁忙期や突発的な顧客対応が必要な場合には、有休などの取得時期をずらすなど、組織優先した行動をとるのが一般的です。
しかし、ベトナム人の場合、家族などの行事となれば、会社の状況に関わらず優先する、ということも多々あります。日系企業でも週6日勤務にして、必要な労働日数を確保している企業もみられます。ベトナム人を管理する日本人駐在員の方は、日々の労務管理においても、このような現地の雇用慣行などに注意をする必要となります。