トルコ、PKKとの和解~今後への期待~

こんにちは、トルコ駐在員の田中隆道です。

トルコでは空港以外の場所でも、セキュリティーチェックがいろいろな場で行われ、ショッピングモールや会社のビルの受付などでは、毎回荷物をX線検査装置へ預け、金属探知機のゲートの下をくぐり、時にはボディーチェックまで行われることがあります。また、企業への訪問の際は、受付で身分証(パスポートやレジデンスパーミットなど)の提示を求められるビルが多く有ります。

このようにセキュリティが厳重な理由の一つとして、テロへの対策が挙げられます。トルコでは2012年度にもイスタンブール市市内のマクドナルドで女子トイレ爆破事件や警察署内での自爆テロ事件などが起こっており、日本の外務省からも注意喚起が出されました。トルコにおけるテロ・誘拐については、北イラクに主たる拠点がある反政府武装組織クルド労働者党(PKK:別名「クルド人民会議(KONGRA-GEL)」)によるものが圧倒的に多く、DHKP/C(革命人民解放党/戦線)によるテロも一部行われています。現在もまだ外務省からの注意喚起は出されたままで、日本人や日本権益を直接対象としたテロ事件などは起きていませんが、観光地などでテロが起きる可能性があるためトルコへ訪問される際は事前情報を確認し、注意する必要があります。

さて、今回はテロ・誘拐に深く関与していると言われているPKKについてみていきたいと思います。

PKKは、中東のトルコ、イラン、イラクにまたがるクルディスタン(クルド人の土地の意)地域に住むインド・ヨーロッパ系民族のクルド人で構成されており、1973年にトルコの首都アンカラで「アンカラ民主・愛国主義教育協会」として設立、1978年10月27日に名前を変更し「クルディスタン労働者党-PKK」となりました。その後、シリアやレバノンの北部に拠点を構え武装グループとして、序々に力を強めていきました。そして、トルコでもトルコ政府と自治権を巡り対立し、イスタンブール市内にもPKKの事務所が所在しています。

しかし、この30年以上続いている深刻な問題にも最近進展がみられ、2013年3月にPKKの元リーダーであるアブドゥッラー・オジャランよりPKKに対し、「武器を放棄して、国境の外に出よ。」と呼掛けがありました。そして、同年5月に一部のPKKがトルコから撤退を開始し、15日早朝、北イラクのハルールに到着したようです。今後、数ヶ月にわたり段階的に撤退が行われていくようですが、カラユラン司令官は「攻撃を受ければ撤退は中止する」と警告しており、まだ完全には安心できません。

ただし、このPKKの撤退は解決への大きな一歩として多くの人から関心を集めており、今までこのPKKとの問題で「トルコ南東部の開発への影響」や「シリア内戦へのPKKの参加」、「国際人権委員会からの非難」、「EUとの関係促進への悪影響」などがマイナス面として言われていましたが、今後この問題が解決されれば、それらのマイナス面に対し大きな改善の兆しが見えます。一例を挙げれば、以前まではこのPKK問題により、トルコの東の地域でシリア近郊について投資は避けられていましたが、問題解決と共に投資地域の拡大に期待が持てトルコへの投資にも多くの可能性が出ています。また、EUへの関係もよくなるのではないかと考えられます。
この問題に対し、今後も結果が出るまで慎重に見守る必要がありそうです。

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