イスタンブール中心部にて反政府デモ トルコの今後は……

こんにちは、トルコ駐在員の田中隆道です。

今回は、日本でもニュースになっていた、5月末に発生したトルコでの反政府デモについて書かせていただきます。

5月31日(金)から激化した、トルコ、イスタンブールの中心部にあるタクシム広場の反政府デモですが、もともとはその数日前から行われていた、タクシム広場のゲジ公園の存続を訴える座り込みから発展し、警察も介入した大規模デモへとなったようです。

現在、トルコではエルドアン首相によって、多くの都市再開発が計画されており、このタクシム広場にあるゲジ公園の取り壊しも、オスマン帝国時代の兵舎をモデルにした多目的ビルを建設するという再開発の一環として計画が立てられていました。また、エルドアン首相はこのタクシム広場の都市再開発以外に、第三大橋や第三空港のプロジェクト、原発建設など小さい規模の都市再開発なども入れると数十箇所にも及ぶ計画を立てています。

今回のデモでは多くの国民を巻き込み、負傷者や死者を出すような大規模なものへと発展しましたが、以前からトルコでは座り込みによるデモなどはタクシム広場の近くで時々行われていました。今回、この様な大規模デモへと発展した理由として、このタクシム広場の再開発へのデモに対し警察が介入し、抑圧しようとしたことにより、それぞれの都市で行われる再開発へ不満を持っていた国民が政府のやり方に不満をもち拡大していったと考えられます。また、5月24日未明に行われた徹夜国会により可決された、酒類の販売及び、広告の規制など政府の傲慢にも取れる法律改正にも不満がたまっており、今までの政府に対する不満が今回のデモをきっかけに噴出したのかと思います。

デモ隊と警察との衝突から機動隊の撤退まで3日間も続いた反政府デモですが、67都市でデモが行われ、1000人弱の負傷者及び、数名の死者を出し、2,000人以上が拘束されたとのことです。6月1日(土)には、イスタンブールのアジア側からタクシム広場のデモに参加しようと、ヨーロッパ側とアジア側をつなぐ第一大橋を埋め尽くすほど、市民が列を作り行進しました。今回のデモでは累計10万人以上がデモに参加したと言われています。

今回のデモで、警察側はデモ隊に対し放水銃や催涙弾を使用し応戦しましたが、その光景は政府側から放送規制がかかり、テレビではあまり放映されませんでした。それに対し国民は、フェイスブックやツイッターなどのソーシャルメディアを使い、デモの様子やデモ参加の呼びかけを行い、フェイスブック上では「メディアが放映しないのであれば、我々が伝えましょう!! どうかシェアしてください。」とトルコ語で書かれた動画をシェアしたり、「インターネットは数時間後、使えなくなってしまうかもしれません。それでも訴えをやめないでください。」と国民、世の中に対して訴えかけていました。

3日間続いたデモですが、エルドアン首相は機動隊をタクシム広場から撤退させ、行政裁判所はタクシムの再開発の一時中止を命じ、収束を試みました。しかし、警察との衝突ではないものの撤退後の6月3日(月)にも夜9時から約30分間、私の社宅の近くで住民が外に出て、鍋をたたいて音を出したり、車のクラクションを鳴らしたり、政府への不満を訴えるような行為が行われていました。

これらのデモを受けて、2020年度の開催予定である五輪招致に影響があるとみられています。また、トルコの通貨リラとトルコ株も急落し、日本円に対してのトルコの貨幣価値も5月中旬には1TL=56円ほどで推移していましたが、現在では1TL=52円程度まで落ち込んでいます。しかし、現政権のAKP(トルコ語:Adalet ve Kalkınma Partisi:公正発展党)は現在まで高い経済成長率を実現してきており、地方を中心に高い支持率を保持しているため、今回の通貨リラとトルコ株の下落も一時的なものに留まるのではないかと考えられています。

今後、2020年の五輪招致や2014年の選挙に向けてルドアン首相がどう行動するかによって、トルコの経済にも影響を及ぼすと考えられるため、今後の動向に注意を払う必要がありそうです。

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