シンガポールの補助金って?会計・税務の疑問にお答え!

会計

コロナウイルス(COVID-19)の影響に対し、シンガポールが各種支給している補助金をですが、それが普段得られるものでないだけに、会計上、税務上どのように取り扱われるのか、よくわからない方は多いのではないでしょうか。

今回は、簡単にシンガポール政府の補助金制度についておさらいしながら、その会計処理と益金・損金の算入・不算入についてお伝えします。

まずは言葉の定義から

補助金と似た言葉に、助成金という言葉があります。

日本では、特定期間内に応募して採択されたものを補助金といい、要件を満たしていれば必ず給付されるものを助成金という、経済産業省が支給するものが補助金で、厚生労働省が支給するのは助成金など、一定の区分が存在します。

一方、シンガポールを含む諸外国では、厳密な区分なく、「Government Grant」などとして支給されるものが多いため、ここではまとめて補助金として扱います。

どんな補助金がある?

シンガポールは国の方針で、国民と企業が生産性を高め、その収益と給与の増加を推進するために財政支援を行うことが決められています。

例えば、従業員の給与を昇給した分から、15%を補助金として払い戻されるWage Credit Scheme(WCS、給与補助金制度)、デジタル技術などのシステム導入に際して費用の一部が補助されるProductivity Solutions Grant(PSG、生産性問題解決補助金)などが打ち出されています。

また、シンガポール人の従業員が兵役(National Service)に出る場合や出産休暇(Maternity Leave)を取得する場合、子育てのための休暇(Childcare Leave)を取る場合などは、それぞれ政府機関のサイトで申請を行うことにより休暇中の給与が支払われることになっており、これらも国の予算で賄われる点、補助金と言えます。

いずれも、企業が負担する費用につき、それが政府の意向に適ったものである場合に、補助金によって費用が補填されるという性質のものであると言えるでしょう。

会計:資産購入に関するか否かで大違い

シンガポール政府からの補助金が何に対するどのような性質の支払いであったとしても、それが受け取れるものである以上、企業にとっては利益を増やす金額です。

会計上の論点としては、この利益の増加をどのように収益として認識すべきかという点で、いくつか区分が設けられています。

この点は、国際会計基準IFRSと、シンガポール会計基準のSFRSの間に違いはありません。

まず、補助金が資産購入に際して支給されるものである場合、それが条件付きのもので返還する可能性もある金額か、返還する可能性のないものであるかによって対応が分かれます。

前者の場合、購入した固定資産が資産として計上され、徐々に減価償却されるのに対応して、一旦繰延収益(Deferred Income)として負債計上し、使用/経年ごとに収益認識するという処理になります。

1.補助金受領時
Dr: Cash
Cr: Deferred Income

2.減価償却時
Dr: Deferred Income
Cr: Other Income

一方、返還する可能性のないものであれば、固定資産購入時に直接資産価格からこれを控除することができます。

会計:費用と相殺すべきではない?

次に、資産購入以外に対する補助金が得られた場合ですが、シンガポールの場合はそのほとんどが費用負担を軽減する性質のものです。

この点、例えば最近コロナウイルス対策措置の負担軽減のために設けられたJob Support Scheme(JSS:職業支援制度)では、従業員の給与に対して直接的に25%~75%の還付が受けられることになっています。

ここで重要なのが、この金額を費用を相殺するものとして記帳してはならない、という点です。

給与はいつも通り総額で認識し、JSSは雑収入(Other Income)などとして認識することが必要になります。

税務:課税所得かどうかは政府次第?

税務上、補助金が益金として課税所得となるか、非課税となるかは税務署の判断事項となります。

一般的にはシンガポールでも、補助金のほとんどは直接的に費用負担を減らす性質を持つため、損金と認識される金額を軽減するものである限り、益金(=課税所得)と認識されます。

例えば、上記のWCSは給与(の増額)が損金であるところ、これを軽減する側面があるため益金として認識されますが、PSGは固定資産の購入に関するものであり、固定資産が損金算入されない以上は益金として認識されることはありません。

ただし、税務の判断は必ずしも一般論が適用できるとは限りません。

例えば上記、昨今のJSSなどはシンガポール政府も明確に税務上の取扱いについて指針を明確にしておらず、今後の判断が待たれます。


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株式会社東京コンサルティングファーム  シンガポール法人
近藤貴政

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