企業誘致のために経営者寄りの法整備がなされたシンガポール、そのもっとも顕著な特徴が、従業員をほとんど無条件に解雇できる点にあるとよく言われます。
しかし、シンガポールの法律では自由にリストラ・整理解雇ができるのかといえば、逆に法整備がしっかりしているだけに、細かなルールがたくさんあります。
今回は、そんな整理解雇の条件に付いてみていきます。
即日解雇って、できるの?
答えは、基本的にNoです。
シンガポール雇用法(Employment Act)に規定される解雇の条件は、一定以上の通知期間(Notice Period)を確保したうえで、過去月の金額から算定される退職金を払って初めて整理解雇ができるというものです。
この整理解雇条件は一般的に3か月間の試用期間には適用されず、即時解雇が可能です。
また、重大な損害を引き起こした、罰則規定にかかるような違反を起こした、などというような場合も、懲戒解雇として即時解雇が可能となります。その場合、通知期間や補償は一切必要ありません。
それ以外の場合、シンガポールでは、最低でも1日から4週間の通知期間を設け、またはその期間分の給与支払いをしたうえでの解雇になると覚えておきましょう。
福利厚生ってなくなるの?
こちらも答えはNoです。
特にシンガポールできっちり確保されるのは有給年次休暇ですが、解雇通知の時点で未消化分の年休がある場合には、通知期間中に取得することが認めらなければならない、というルールです。
もちろん、年休を現金化(encash)して支給することも可能で、リストラで人員は削減するものの、業務はしっかり引き継いでもらいたい、という場合に、年休取得で引き継ぎ期間ゼロとなるのを防ぐことができます。
退職金っていらないの?
またまた、基本的に答えはNo、退職金の支給が必要です。
これは、2年以上勤続している従業員には、最低でも1か月の基本給相当が与えられるべきだという規定によるものです。
なお、シンガポール全般では、整理解雇の対象者に対し、勤続年数×基本給(または基本給の半額)という数式で付与するとしている企業が多いようです。
政府に報告しないといけないの?
こちらは、規模の大きい整理解雇のケースのみ、Yesです。
10人以上の従業員がいる企業で、直近6か月以内に5名以上の整理解雇を行う場合、今後の事業計画も含め、労働省MOMへの報告が必要です。
MOMのウェブサイトからCorpPassでログインし、オンラインで報告を行うことになります。
まとめ
いかがでしたか?
かいつまんでいうなら、シンガポールの法の下では、従業員と経営者は同等の存在であり、お互いの契約によって義務と権利を行使できる、と考えることができるでしょう。
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