シンガポールにおける居住法人において、今まで何も問題がなかった会社は心配する必要はないのでしょうか。
答えは「否」です。実はこの論点は、以前からあり、税法は一切変更されていないのです。しかしシンガポールのみではなく、全世界で同じような問題が注目され、税務当局の対応が厳しくなっている傾向があります。
近年の国際税務に関して、「BEPS(ベップス)」とか「税源浸食と利益移転」という言葉があると思われます。
具体的にはイギリスでスターバックスが税金を払っていなかった問題、グーグルがダブル・アイリッシュ・サンドイッチというスキームで極端な節税をしていた問題などがあります。
これらの“抜け穴的”節税を世界各国で防ごうという動きです。
それらの影響として、居住性、経営実態の判定が厳格化しています。
よって、今まで何も言われてないのにかかわらず、居住性が否定されることになる可能性がないとは言えません。
居住性を満たすための実務的要件
主に取締役会の開催場所が重要とされていますが、それだけではありません。
例えば、日本の親会社の役員や事業部長がシンガポールのダイレクターとして登記され、現地の駐在は単なる従業員として扱われている場合などは要注意です。
経営の重要事項の意思決定は日々の業務の中でも行われているはずですだからです。
具体的条件は明確ではありませんが、実務上の当局の対応と一部の規定から、以下のような対策が有効と考えられます。
- 取締役会の頻度は、居住役員の有無、会社の業務を考慮して検討する。
- 取締役会の議事録は、業務に関する意思決定も含めて記録・保存しておく。
- 取締役会、重要経営会議はシンガポールで開催する。
- 役員のうち、最低限1名はシンガポール居住者とする。
- その役員は、業務執行を行う役員とする(名義貸し役員ではない)。
- 業務分掌を作成し、役員や現地駐在の役割を明確にしておく。
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東京コンサルティングファーム
吉岡大樹
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