シンガポールといえば地域統括会社!実際どうなの?

法務

 

アジアの金融・物流のハブとしてヒト・モノ・カネを集めてきたシンガポール、地域統括会社として活用しようという声は、かなり昔から聞かれている言葉です。

では、実際にシンガポールに地域統括会社を置くことでどのようなメリットがあるのか、すぐに答えられる人はなかなかいないのではないでしょうか。

今回は、そんな地域統括会社のメリットとして、シンガポール政府から受けられる優遇政策を見ていきましょう。

 

地域統括会社は一つじゃない?

まず、一般にいう「地域統括会社」という概念が、シンガポールにおいては大きく二分されることにご注意ください。

一つは国際統括本部(International Headquarter:IHQ)、もう一つは地域統括本部(Regional Headquarter:RHQ)と呼ばれます。

いずれも、資産や人材、管理統括機能をシンガポールに置いた場合にのみ認められるものであり、日本など別の場所に意思決定権があったような場合、比較的大規模な権限移譲が必要になります。

優遇政策の適用においては、それぞれIHQ Award、RHQ Awardという登録制度に申請し、認可を受ける必要がありますが、要件が明確に定められているのはRHQ Awardの方です。

規模のより大きいIHQ Awardの方が認可は難しくなりますが、以下、便宜上二つを合わせて地域統括会社の登録制度とします。

 

ズバリ、優遇されるのは税率です!

元々一般の国よりも税率の低いシンガポールですが、地域統括会社の認可を受けて、優遇されるのはやはりこの税率です。

優遇税制を受けられれば、一般に17%である法人所得税の税率が、15%へと軽減されます。

厳密には、IHQ Awardに申請・認可された場合は5%~10%というさらに低い税率が適用となりますが、この点の基準は明確に公開されていません。

 

気になる認可の基準は?

地域統括会社と認可されるための基準は、主に以下の内容が事業計画として盛り込まれ、実行されることとされています:

1.払込資本金(Paid-up capital)がS$200,000以上であり、さらに3年以内にS$500,000以上の資本金を払い込む

2.3年以内にシンガポール国外に3か所以上子会社/兄弟会社など事業拠点を持ち、それら事業拠点に対して3種類以上のサービスを提供する

3.優遇税制を受けている期間、会社の4分の3以上のスタッフがNTC2(National Trade Certificate II)と呼ばれる資格を得られるレベルの人材であること

4.3年が経過するまでに、大卒以上の専門職人材を少なくとも10人以上採用するまでに会社の規模を大きくすること

5.3年が経過するまでに、スタッフのうち少なくとも5名が年間S$100,000受給する管理職に就いていること

6.3年が経過するまでに、シンガポールにおける年間事業支出(Annual business spending)がS$200,000増加すること(シンガポール国外での外注費、海外の特許、ロイヤリティー、資源・物資購入などの支出はこれに含まない)

(事業計画、作ってみようかな、と思われた方、ぜひご相談ください⇒TCF:+65-6954-9457)

 

他にもある?地域統括会社優遇制度!

また、シンガポールの産業支援制度として、EDB(Singapore Economic Development Board、シンガポール経済開発庁)も忘れるわけにはいきません。

EDBは、シンガポールが国として誘致を希望するいくつかの分野における技術開発、人材育成、事業拡大を後押しするため、様々な助成制度を設けている機関です。

そんなEDBの制度の中に、PC(Pioneer Certificate Incentive、パイオニア優遇制度)とDEI(Development and Expansion Incentive、成長・拡大優遇制度)という優遇制度があります。

この点、グローバルおよびリージョナルな本社機能、企業グループの統括機能などの設置や移転を検討・実行した企業、つまり地域統括会社に応募資格が発生します。

このPC/DEIに認可された事業活動にも、本来17%である法人所得税が免税、ないし5%~10%まで軽減されます。

ただし、事業活動が多岐にわたり、PC/DEIが適用されない活動を含む場合には、そうした非適用の活動に関する帳簿を別に作成したうえ、その非適用活動に関しては別途申告を行って通常の税率で法人所得税を納付する義務があるため、注意が必要です。

優遇税制適用期間は5年間ですが、事業が拡大を続ける場合にはさらに延長も検討されます。

 

PC/DEIの応募資格は?

PC/DEIへの応募資格は必ずしも公に数値化されていませんが、主に以下の点で基準を満たしている必要があります:

・雇用の創出(技術・専門職)

・経済的効果を生じさせるだけの事業支出がある

・シンガポール内で技術、スキル・ノウハウの進歩を生んでいる

 

特にPC企業として認可されるには、特定の産業で一般企業よりも優れた技術、スキル・ノウハウを導入していること、経済に影響を与えられる規模で、他の会社が導入していないような革新的試みを行っていることが必要とされています。

(自分の会社も該当するか、と思われた方、ぜひご連絡ください⇒TCF:+65-6954-9457)

 

厳しいコンプライアンスにもご注意を!

PC/DEI会社に認可された会社は、定期的に進捗報告を提出し、その業績につき評価を受ける義務があります。

具体的な指示はEDBから出されますが、こうしたコンプライアンス事項に違反した場合、統括会社に対する優遇税制はキャンセルされるとされています。

さらに、通常シンガポールでは問題とならない移転価格(Transfer Pricing)に関しても要求があります。

地域統括会社である以上、関係会社間取引の頻度は高くなるのが通常ですが、この取引価格はすべて独立企業間価格(Arm’s Length Price)でなければならず、さらにIRASに対する移転価格文書の提出も含まれ、一般に専門家を用いた文書化作業が必要になります。

以上、アジアで自信をもって売り込める商品・サービスがあるのであれば、地域統括会社を作って書類の処理を済ませ、大規模に短期間で売りさばくつもりで人や物に投資すれば、税務上大きな優遇を受けた事業展開ができる、とまとめられます。

 

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