毎年多くの企業が設立され、撤退していく実験国家のシンガポール、どこの企業であっても、何十年、何百年と続く老舗を作るつもりで進出するところはまれでしょう。
限られた市場にこぞって進出するのですから、進出した後でシンガポール子会社の運営がうまく行かない企業は、必然的に発生します。
今回はそんな子会社経営がピンチに陥った時の対応の一つ債権放棄についてお伝えします。
最後の手段ではありません!
まず、最初に最後の手段から解説すると、会社は存続し続けるのでない限り、必ず買収されるか清算されるかどちらかになります。
買収される場合はM&Aのプロセス、デューデリジェンスで、企業の価値が明確にされ、購入者と売買契約を締結することで買収が完了します。
一方、買い手が見つからないような場合には、会社は債権・債務を清算したうえで、撤収(Winding Up)という手続きを経ることになります。
債務の清算がうまくいかない場合、シンガポールでは、出資者や債権者が話し合って清算人を立てる任意清算(Voluntary Winding Up)や、スキームオブアレンジメントなどの対応が取られます。
債権放棄は飽くまでも会社が存続する前提で行われる対応であり、最後の手段ではありません。
シンガポールでは税金が発生?
子会社が負債を抱え込んでいる場合、その負債を解消するために、増資を行ったり、デットエクイティースワップを行ったりして財務状況を改善しますが、最終的に資本金を返金できない状態になっている場合は、債権者にお金が返済できないという意味になります。
この場合、株主である親会社が債権放棄を行うという手段があります。
シンガポール子会社から見れば、資本金であった金額が利益剰余金として算入されて債務が免除された形になります。
ここで、債権放棄した金額につき、債務免除益が計上され、シンガポールの法人所得税率17%で計算した法人所得税を納付することになる点に注意が必要です。
債権放棄しても損金不算入?
次に、日本の株主、親会社側での債権放棄の扱いに着目します。
株主が債権放棄を行う場合、それがシンガポール子会社に対する寄付金として理解されてしまうと、損金不算入となります。
基本的には、当該シンガポール法人が子会社であり、経営危機に陥っていて、これを回復する際、親会社の日本法人が損失を負担する正当な理由があれば、日本側で損金算入が可能になるとされています。
しかし、大きな金額の債権放棄を行った後で、日本で税務申告を行って損金算入ができないといわれるケースがあるため、十分に税理士と認識をすり合わせたうえで実行することが必要です。
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