シンガポールはタックスヘイブン?注意点のおさらい!

税務

 

シンガポール(2019年17%)は香港(2019年16.5%)と並び、東南アジア地域では低税率国として有名ですが、その分タックスヘイブン税制については国内以上に、子会社を設置して進出している本国の側で重要になってきます。
今回は、注意点のおさらいもかねて、シンガポールに会社を作ってビジネスをする場合の税制上の注意点を見ていきましょう。

 

そもそもタックスヘイブンって?

簡単なイントロダクションから始めます。

タックスヘイブンとは、日本語で租税回避地と訳される軽税率国・地域を指します。そこに子会社を作り、利益を蓄積することで、当局による徴税を免れることができる国や地域のことです。

ヘイブンは英語で隠れ家というような意味ですが、一旦その隠れ家から出てきてしまえば、最終的には納税義務が発生する仕組みであるため、その存在自体は全く悪いものではありません。

シンガポールの法人税率は17%と、もともと20%未満であったほか、日本から見れば軽税率であるため、タックスヘイブンとして利用される対象になります。

相対的に見て、軽税率国・地域はタックスヘイブンになりうると理解しておきましょう。

なお、シンガポール以外でも、有名なところではバージン諸島、ケイマン諸島やアメリカのデラウェア州、オランダなどが有名で、そもそも課税が行われないような場所もあります。

 

タックスヘイブン対策税制って?

次に、タックスヘイブンとしてのシンガポールがどのように使われるかを見ていきましょう。
具体的なモデルとしては、例えば日本の会社が海外でものを売るとき、直接販売するのではなく、シンガポールに子会社を作って、そこから販売するように商流を組むことができます。

このとき、日本の親会社からシンガポール子会社へ販売する価格を低くすると、相対的に日本側の粗利益が下がり、シンガポールに利益をつけることができます。

これを利益の移転、移転価格(Transfer Pricing)といいます。

税率の高い国から低い国に移転価格が行われると、両国の合計で見たとき、グループ全体で支払う税額は低く抑えられます。

これが租税回避といわれる国際取引であり、合法的ではありますが、高税率国では税収が著しく低下するうえ、企業の業績を公平に把握することも難しくなるため、国際的な協力により公平に税収を確保していこうという仕組み作りが始まっており、これをタックスヘイブン対策税制といいます。

 

ウチも関係あるの?

タックスヘイブン対策税制は、ビジネスを国際展開するほとんどすべての企業に影響します。

具体的には、国の税務当局から指摘を受けたとき、自分たちが公平な価格で国際ビジネスを行っていることを証明するか、タックスヘイブン対策税制の枠組みに沿った納税を行っていることを示す必要があります。

これには実務上、専門家の助けを借りて、グループ間で移転価格文書を準備することになります。

移転価格文書は簡単に言えば、グループ間の取引も、他社と取引する場合と変わらない価格設定(独立企業間価格Arm’s Length Price)で取引をしていることを証明する文書です。国別報告事項、マスターファイル、ローカルファイルの3点を準備します。

 

シンガポールのルールは?

シンガポールは軽税率国に属するため、移転価格文書作成の要求は比較的厳しくなく、納税者となるシンガポール法人について、以下の基準が設けられています:

1.年間粗利益がS$10,000,000を下回る場合は移転価格文書を用意する必要はない
2.製品の販売による年間粗利益がS$15,000,000を下回る場合は、移転文書作成が免除される

上記基準を超過してしまっていても、法人税を申告する際に文書の提出を求められることはありませんが、当局から要求が来た場合には30日以内に提出する義務が生じるため、予め準備しておくことが重要です。

参考:https://www.iras.gov.sg/irashome/uploadedFiles/IRASHome/e-Tax_Guides/etaxguide_Income%20Tax_Transfer%20Pricing%20Guidelines_5th.pdf

 

受動的所得も問題になる?

日本の会社が子会社(保有株式50%超)としてシンガポール法人に投資会社を設立し、配当などで利益を得るような場合には、日本側のタックスヘイブン対策税制によって関係会社との取引がチェックされます。

投資会社が実体のないペーパーカンパニーである場合には、シンガポール法人が日本法人の一部のような扱いを受け、支店と同様に合算して納税する義務が発生します。

さらに、経済活動基準を満たして実体のある法人であることを証明しても、受動的所得(配当、技術使用料、その他金融資産の保持・販売による利益)については合算して日本法人の側で課税される(部分合算税制、ただしJPY20,000,000以下は免除)ため、注意が必要です。

 

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株式会社東京コンサルティングファーム  シンガポール法人
近藤貴政

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