どうしてこんなに書類が多い?シンガポールでも揃える銀行の足取り!

 

口座の開設の書類が大変!

シンガポールで何十年ビジネスをしている人なら、銀行口座開設時における近年の変化にもお気づきかもしれません。

スタンダードチャータード、HSBC、ドイツバンクなど、外国のメガバンクと並んで、シンガポールの三大銀行(DBS、UOB、OCBC)でも、口座開設の手続きは年々煩雑になってきています。

 

それもそのはず、テロリズムとマネーロンダリングに手を打つため、国際組織であるFATF(The Financial Action Task Force)の指揮のもと、国際的にマネーロンダリング防止(AML:Anti-Money Laundering)とテロ資金供与対策(CFL:Counter-Terrorist Financing)が導入され、銀行はデフォルトで様々な国際基準を満たすよう確認作業を行う必要が出てきたのです。

今回は、そんな煩雑化する銀行口座開設手続きで求められる、基本的な確認ポイントをまとめてお伝えします。

 


秘書役会社にも求められるKYCとは?

シンガポールでも2018年中、会社秘書役から「KYCフォームを記入してください」と言われた経験のある企業様は多いのではないでしょうか。

顧客情報を最新状態にしておく取り組みとして、会社に関わる情報をまとめて記載することになるフォームがこのKYC、Know Your Customer(完全な顧客確認)の取り組みです。

銀行にも秘書役会社にも、RBA(Risk-Based Approach、リスクに基づいたアプローチ)と呼ばれる方針で査定を行うことが求められ、KYCフォームといった形で、アンケートに答えるように情報の提供を行う必要があるのです。

 

また、ビジネススキームも開示し、どのような経路で資金を確保し、何をして収益を上げ、どのような経済活動を行っていくか、示す必要があります。

シンガポールは英語で提出が可能であるため、事業計画として3年先までの見込み財務収支をP/Lとして作成し、具体的なビジネススキームの図面作成など、予めきっちり作りこんでおくといいでしょう。

なお、2019年現在、シンガポールのほとんどの銀行では、これらは簡単なインタビューに答える形で連絡できています。

 


関係者はみんな見られる?FATCAも加わっての情報開示要求!

シンガポール法人の設立の際、提出する必要のある書類に、取締役全員の身分証明があります。
さらに言えば、下記に述べるUBOの身分証明も求められますが、銀行の場合はさらにサイナーの情報も重要になります。

銀行の場合、誰が企業をコントロールし、資金調達を受け持つことになるかという観点から、取締役や株主、サイナーの情報を、これまでの職歴や雇用契約を提出する形で求められるのが一般的です。

 

さらに、FATFと合わせて、シンガポールにも影響しているのが米国FATCA(外国口座税務コンプライアンス法)と呼ばれる法律です。
こちらは上記のような法人関係者、およびビジネスに関連する金融機関について、米国人/米国法人が含まれていないか確認するというものです。

KYCフォームと似て、とにかく書けるだけ書いて、急いで潔白(?)を証明することが肝心です。


有名人はいないほうがいい?CDDの実施

カスタマーデューデリジェンス(CDD:Customer Due-Diligence)と呼ばれるのは、いわゆる法人への監視行為ですが、目のつけどころは以下の主にPEP(Politically Exposed Persons)と呼ばれる、重要な公的地位を占めた人々です。

 

具体的には、各国の大使や政治家等、公の地位に就いている人物のほか、ニュースに出てくるような大会社の社長、王族・皇族、芸能人等、巨万の富を動かす可能性のある人物が対象です。

基本的にはこうしたPEPが名義貸しなどでマネーロンダリングに加担することがないようにするため、記入フォームにYes/Noのチェックを入れる形でPEPが会社に絡んでいないかを報告することになっています。

会社関係者に著名人が要る場合は、その情報をまとめて報告できるよう、アップデートと書類化を進めておくといいでしょう。

 


どこまで調べられる?UBOの根拠

情報を記載するだけでなく、具体的に要求される資料があるのがUBO(Ultimate Beneficial Owner:実質的支配者)と呼ばれる人物です。

具体的には、株式保有率が50%を超える個人、それがなければ株式保有率が25%を超えるすべての個人がUBOとみなされます。

上場会社(Listed Company)など、無数の株主がいる形態では、UBOがいないとされることもあり、その場合は上場していることを証明すれば事足りるとされています。

 

厄介なのは、親会社など、株式保有率が50%を超えるUBOが、法人に当たる場合です。
この場合、その法人のUBOは誰であるか、さらに株主構成を明らかにした上で、最終的に個人の株主に行き着くまで、または株主が特定できないことがわかるまで、延々と株主構成を証明する必要が出てきます。

なお、一般に求められるのはUBOのパスポートと現住所、それからその株式保有数を証明する株主名簿など書類です。
大きな会社ともなるとこうした資料を集めるのも困難になるため、銀行口座開設が必要ならこうした資料を求められることを了解していることは肝心です。

 


まだ始まってないのに?資金調達先からパートナーまでばっちり見られる!

もう一つ、よくあるのが、会社とすでに関係を持っているビジネスパートナーとの関係を見せろというものです。

契約書や覚書(MOU:Memorandum of Understanding)、それがなければ交渉を行うメールのやり取りでも構わないから見せろと求められるのが通常ですが、これはビジネスパートナーにマネーロンダリング、テロ資金供与などに絡む組織がいないか、リスク評価を行うために行われています。

 

まだ現地シンガポールでの活動も始めていないのに、ビジネスパートナーとのやり取りなど見せられるわけがない、とも考えられますが、そもそも法人設立、銀行口座開設に至った経緯から洗い出して、リスクがないかはっきりさせたいという意図があることを、理解しておくといいでしょう。

 

以上、書き出すだけでもうんざりするくらいの大変な手続きですが、どの国でも同じように情報を提供する必要があるのだと理解し、事前にできる限りの準備をして、口座開設時にあたふたしないようにしたいものです。

法務に関するお問い合わせはもちろん、税務や労務に関するお問い合わせも、お気軽にお寄せください。

 

 

株式会社東京コンサルティングファーム  シンガポール法人
近藤貴政

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