皆さん、こんにちは。シンガポール駐在員の岩城です。シンガポールにおけるWatch Listに関するセミナーが先日開催されましたのでご説明いたします。
現在、外国人比率の高い企業においてWatch Listという、MOMに監視されている企業リストが企業の人材戦略に大きく影響を及ぼしています。
というのもこのWatch Listに入った企業においては、EP(就労ビザ)の取得が非常に遅くなり、申請から認可まで、最大で4ヶ月もかかったというケースもあります。その他の事例においても、3カ月ないしは現在も申請中といった事態になっています。
シンガポールの労働人口はローカルが約220万人、外国人が約110万人となっています。そのため、政府としては企業が平等な人材戦略を取るにあたり、ローカル2:外国人1という比率を企業で実践することを求めています。
それにも関わらず、外国人比率が圧倒的に高い企業においては平等な人材採用活動を行ってないものとし、政府がWatch Listにて監視するという状況となっています。
少子高齢化が進むシンガポールにおいて、ローカルの労働人口は今後減少していくことが避けられません。ただし、外国人を現状のまま就労許可してしまうと、現在2:1である状況がいずれ逆転してしまう可能性もあります。そのため、政府として外国人就労者の人数を制限していく政策を取っているわけです。
この制限していくというのは、単に外国人の新規での就労を認めないと言っているわけではありません。あくまで外国人労働者のクオリティをこれまで以上に厳しく判断をしていくとMOMは言っています。
現在日系企業でWatch Listに入っている企業は31社あります。Watch Listに入らないようローカル比率を高めていく努力をしていくことも重要です。
そこでやはり難しいのがどのくらいの比率をローカル人材にする必要があるのかということです。上記2:1という比率はあくまで一つの理想値であり、業種によってはシンガポール人の採用が難しいものです。
この点については、MOM理解を示しており、その業界においての企業間比較をしていると言っています。例えば、その業界で一般的な外国人比率が3割にもかかわらず、ある一社が6割の外国人比率であった場合、この会社は平等でない採用活動を行っているとみられるというものです。
また、Watch Listに仮に同じ外国人比率にも関わらず、一方の会社だけWatch Listに入り、他方の会社においては入らないというケースもあるようです。というのも、シンガポールで20年や30年長期にわたって活動している会社であれば、その会社はローカライズを促進すべきであるという認識をMOMは持っています。一つのポジションで外国人を定期的に回している企業においては、ローカライズの努力が見られないという判断をされてしまいます。
最後に、2:1の比率を守っていればそれで良いのか。
MOMとしてはシンガポール人が働きやすい業種5つ(ファイナンス、IT、医療、プロフェッショナルサービス)については、さらにシンガポール人を採用することを期待しています。
つまり、単純に2:1の比率を守っていればいいわけではなく、業界通例や環境に応じてローカル採用の検討をしていく必要があるということです。
日本企業においては、ローカライズが遅れている企業が多いように思います。思い切った決断を求められている時なのかもしれません。
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