TCGのノウハウツールWiki Investmentの中から、シンガポールにおけるM&Aのポイントを公開します。
M&Aをする上で最初に考慮すべき要素の一つが、国ごとの投資規制です。
最初からルールで認められない出資であれば、検討する余地もないからです。
今回は、シンガポールでM&Aをする上で知っておきたい投資規制についてお伝えします。
枠組み
シンガポール政府は、外国からの投資規制として、二つの方面でその監視と統制を行っています。
一つ目は、法的な制限です。
数は限定的ですが、主に国家の安全保障にかかわる業種に関して、それぞれ関連法規が定められており、様々な規制が設けられています。
もう一つはライセンスによる管理です。
上記関連法規に基づき、関連省庁がそれぞれ条件を設けてライセンスを付与することで、実質的に参入を制限し、管理をしています。
多くの場合、外資に限らず、インフラ関連、法律サービス、建築、製造、小売、飲食、金融、教育、観光、不動産関連などの業種には、ライセンスが必要です。
また、投資規制とは言えませんが、シンガポールは経済発展庁(EDB)などの政府機関を通じて様々なインセンティブを提供しており、それが間接的に政府の誘致したい業種を指定することになっています。
規制業種
シンガポールで明確に法的な制限が課せられている規制業種は、以下の数種類です:
・不動産事業
・マスメディア事業
以前は電気・ガス等インフラ事業も投資規制のある業種と数えられていましたが、実際には一社が独占的な地位を築いていたにすぎず、2019年5月以降、他社も算入が自由になり、市場が解放されています。
以下、それぞれ条件等を記載します。
不動産事業
場所により、シンガポール土地管理局(SLA)、住宅開発庁(HDB)、JTCコーポレーション、と3つの管轄当局が存在します。
住宅用区画、特にHDB管轄の住宅や外国人労働者用ドミトリーについては、外国人による保有が制限されています。
一方、コンドミニアムと呼ばれる住宅物件や、セントーサ島にある住居、産業用不動産については、外国人による購入も可能とされています。
マスメディア事業
シンガポールメディア開発庁(IMDA)によって管理されており、シンガポール国内で放送を行う企業に関しては、外資に法的な規制がかけられています。
具体的には、49%を超える株式または投票権を外資が保有する企業には、放送業のライセンスが付与されないことになっています。
他にも、放送業の企業の株式保有にはIMDAの事前承認が必要であり、株式だけでなく、放送業の会社が行ういかなる放送サービスについても、外資が財務援助を行うためにIMDAの事前承認が必要です。
放送業の会社の取締役は最低でも半数がシンガポール国籍でなければならず、そのCEO指名にはIMDAの事前承認が必要です。
放送だけでなく、新聞業の会社にも、一定の株式をシンガポール国籍の株主または承認された法人の保有とすること、外資による株式保有、融資にはIMDAの事前承認が必要なこと、すべての取締役がシンガポール国籍であること、など厳しい制限がかけられています。
罰則
上述のような投資規制のある業種について、事前承認を取らずに事業を行ってしまった場合、またライセンスが必要な業種について、これを取得せず事業を行ってしまった場合には、厳しく処罰されます。
具体的には、将来的なライセンス付与の申請却下、罰金、禁固などが課せられることになります。
以上、シンガポールのM&A情報をお伝えします。
投資規制、ライセンスに関して、もっと詳しく聞きたいという方、ぜひお気軽にお問い合わせください。
M&Aに関するお問い合わせはもちろん、税務や労務に関するお問い合わせも、お待ちしております。
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