シンガポールにおけるM&A税制は、以下の通りです。
通常M&Aにおける税制は、組織再編税制に見られるように、売却する側にどのように税金が発生するかが問題になります。また、一般的によく利用される単純な株式の売却および取得に関しては、売却した側に株式の売却益の課税がなされます。シンガポールではこの株式の売却においてキャピタルゲインが非課税になるので、シンガポールの優位性として広く知られています。
一方で、M&Aの買い手に対する税制はどうでしょうか。M&Aの買い手で特に大きな財務上の問題点はいわゆる「のれん」です。のれんは、取得の対象となった会社の簿価を上回る価格で取得した場合の差額です。日本の会計上は一定期間で償却する必要があり、収益の圧迫要因となります。IFRSでは償却こそ不要ですが、絶えず減損の検討をする必要があり、その価値に対して常に見直しをしなければなりません。
そのような償却や減損の要因であるならば、税務上も当然損金になるのだろうと思いますが、実際はそうではありません。日本の税制では、M&Aのスキームとして事業譲渡の形式に、取得会社が連結納税を選択している場合など、一定の方法による場合のみ「のれん」部分が損金になります。
この点、シンガポールではでは「のれん」の損金算入の規定こそありませんが、M&A控除(Merger and Acquisitions Allowance)という損金項目が認められており、のれんの損金算入に比べて、以下のような特徴と有用性が認められます。
- 株式の取得に適用される
シンガポールでは株式の売却益が非課税であるため、単純な株式譲渡が用いられることがあります。これに対応して株式譲渡のスキームに対して適用されます。よって、税制上のメリットを取るために複雑なスキームを考える必要がありません。
- 取得価額の25%が一律損金になる
「のれん」がなくても、取得価格の一律25%を「のれん」とみなしていることになります。よって、価格交渉で買収価格が下がっても、のれんの割合は変わりません。また簿価やそれ以下の価格の取得でも、この控除が使えることになります。
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吉岡大樹
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