個人所得税(Tax on Income)について①

税務

こんにちは、フィリピン駐在員の田辺です。

先日、フィリピン・セブ島への進出をお考えになっているある企業のご担当者様から個人所得税に関するご質問を頂きました。そのこともあり、今週・来週・再来週と3回に分けて、じっくり個人所得税についてお話をさせて頂こうと思います。

フィリピンにおける個人所得税の課税期間は、暦年(その年の1月1日~12月31日まで)とされています。
フィリピンに居住する個人や日本からの現地駐在員について、個人所得税を計算する場合、まずその対象となる人が「居住者」であるか「非居住者」であるか、つまりその対象者の居住性が重要となります。この居住性により、課税される所得の範囲が異なってくるからです。
●居住者の定義
フィリピンにおける居住性の区分は、以下の要件のいずれかを満たす場合に居住者として区分されます。
・フィリピン国籍を有する個人(居住性は問わない)
・フィリピンに定常的な住居を有する者
・12カ月以内に180日以上フィリピンに滞在している者
【居住性の判定図】

●課税される所得の範囲
フィリピンでは、「フィリピン国籍の居住者(Resident Citizens)」の場合は、フィリピン国内の所得だけでなく、どこで受け取ったかに関わらず、その他の国において発生した所得のすべてがフィリピンにおいて課税されることになります(いわゆる、全世界所得の申告)。

  フィリピン国籍の居住者 外国籍の居住者非居住者
フィリピンにおいて発生した所得(国内源泉所得) 課税
フィリピン以外の国で発生した所得(国外源泉所得) 課税 非課税

日本からの駐在員の場合、通常、「外国籍の居住者(Resident Aliens)」に該当すると考えられます。外国籍の居住者については、国内源泉所得のみがフィリピン国内で課税されます。
したがって、日本において不動産などを有していて、そこから賃貸収入などが発生している場合には、フィリピンでの課税は行われないことになります。

前述のように、フィリピンの税法では、居住者を180日以上フィリピン国内に滞在又はフィリピン国内に住居を有するものと定義しています。
一方、日本の所得税法では、国内に住所を有し、又は現在まで引き継いで1年以上居所を有する個人、を居住者と定義していることから、一定の場合は、日本とフィリピンの双方で居住者の認定を受け、所得税が両国で二重に課税されることになります。

設立間もない製造子会社の立ち上げ支援などで、フィリピンの子会社等に派遣される場合、あるいは業務のために頻繁に出張する必要があり、結果としてその滞在日数の累計が180日に達する場合、この二重課税に該当するケースもあります。仮に、両国で居住者に該当する場合には、両国間で締結されている租税条約に基づき、いずれかの国でのみ居住者となります。

また、日本からの短期の出張や現地視察の場合などで、租税条約に定められる短期滞在者免税(日フィリピン租税条約第15条)の要件を満たす場合には、フィリピン側において所得税の申告納付する義務が免除されます。

[参考1]短期滞在者に対する人的役務所得(日フィリピン租税条約第15条)
租税条約においては、給与収入について、実際の勤務が行われている国でのみ課税されると記載されています。つまり、給与の発生源泉である勤務が行われていない場合には、給与収入に対してその国で課税が行われることはなく、実際の勤務地において課税されることになります。
日本からフィリピンに出張する場合、以下の3要件を満たす場合には、支払われる報酬又は給与に対してフィリピン側で課税がされません。
・滞在日数基準
→課税年度における滞在日数が183日を超えないこと
・給与支払地基準
→報酬又は給与が日本側で支払われていること
・給与負担基準
→報酬又は給与がフィリピン国内におけるPE等において負担されていないこと
ただし、この短期滞在者免税の規定については、通常の雇用契約に基づく従業員にのみ適用される規定で、法人の取締役など委任契約に基づく者に対しては適用されないため、注意が必要です。

[参考2]役員報酬にかかる課税(日フィリピン租税条約第16条)
給料等に関しては、原則としてその国において勤務が行われていない場合には、税金は課税されないこととされています。つまり、日本からフィリピンへ従業員が出向した場合、日本で勤務が行われない限り、日本側で課税問題が生じることはありません。
しかし、日本側の法人の役員がフィリピンに居住者として駐在する場合、もし日本の会社から役員としての報酬を得ている場合には、仮に日本側で非居住者であり、かつ、国内勤務が無い場合であっても、日本側において課税がされるため注意が必要です。

来週・再来週のブログではこの続きについて、またお話をさせて頂きます。
今週もどうぞ宜しくお願い致します。

以上

関連記事

ページ上部へ戻る