こんにちは、フィリピン駐在員の大橋です。
今週のブログは、新規法人設立時の検討事項ついてお伝えします。
フィリピンにて法人設立をされる際は、以下のような流れで検討頂ければと思います。
1 事業の内容は何か
この際、フィリピンでは基本的に1会社1事業目的であることにご注意下さい。それに付随する関連ビジネスはOKです。関連するビジネスかどうか悩む場合には、SECに聞きに行く、もしくは定款の副次目的に記載しておいて、トライしてもよいかもしれません。
事業の内容がネガティブリストに記載されている規制業種の場合には、外資の規制がかかります。外資の規制がかかる場合には、信頼できるパートナーを見つけられるどうかが重要になります。
2 売り上げをどこから上げるのか。
輸出売上が全体の60%を超える会社は輸出型企業とみなされ、資本金の規制(外資40%超は払込資本金20万USD以上という規制)が免除されます。このため、外資40%超であっても、会社法上の最低払込資本金である5,000ペソが適用されます。
※実務上は、10万ぺソ以上をSECより求められることがあります。)
この際、PEZA登録企業への販売は海外への売上とカウントできる点にご注意下さい。
また、輸出売上が全体の70%を超える場合には、一定の条件をクリアすることでPEZAの優遇や、BOIの優遇を受けられる可能性がありますので、それぞれの優遇制度を確認されて下さい。
※PEZAやBOIは好意的に優遇をうけられるかどうかの説明をしてくれます。
また、やや込み入った話になりますが、国をまたぐ取引を業にされる場合には、事前に源泉税や付加価値税、租税条約適用申請(TTRA)に関する調査を検討する必要があります。
3 外資をどのくらい入れるのか。
外資規制がない場合で輸出型企業でない場合、外資40%超の会社を設立するには、払込資本金として20万USD以上を入れる必要があります。この20万USDの投資が難しい場合には、外資40%までの会社を設立することになります。この場合にも、信頼できるパートナーを見つけられるどうかが重要になります。
4 資本金の設定について
最低の払込資本金を確認したら、資本金の設定を行います。この際、払込資本金の4倍まで引受資本金の設定が可能となり、引受資本金の4倍まで授権資本金の設定が可能です。しかし、通常は払込資本金と引受資本金を同額、その最大4倍で授権資本金を設定するのがよいかと思います。
理由は、株式譲渡をする場合、その株式については全額払込が終わっていないといけないというルールが会社法にあるからです。将来の法令違反を避けるという意味で、引受資本金と払込資本金を一致させておくのが望ましいと言えます。
また、資本金の金額設定に関連し、SECへの登録料として授権資本金の0.2%、税務署への印紙税の支払いとして引受資本金の0.5%、市役所における事業税の支払いとして払込資本金の約0.1%(市役所によって若干の変動あり)がそれぞれかかります。他方、あまり資本金を小さく設定しすぎると将来の増資の際に授権資本金の増資手続きが必要になり、その手続きが若干煩雑であることを考えると、資本金は大きすぎず小さすぎず、授権資本金のみ若干のゆとりをみて設定されるのがよいかと思います。
5 特別なライセンス等が必要な業種かどうか。
人材紹介、建築業、英語学校、物を輸出入する業種等の場合、それぞれ通常の設立手続き以外に特別なライセンスの取得が必要になります。この場合、ライセンスによっては払込資本金の規制がある場合があり、注意が必要です。それぞれ、担当の政府機関への確認が必要です。
6 フィリピン進出の時期
気を付けるべきはクリスマスのシーズン(12月)と1月です。クリスマスシーズンは担当官が休暇ということで手続きがとても遅くなることがあります。また、1月は営業許可書の更新のシーズンのため、地方政府が新規受付をストップしてしまいます。それゆえ、12月と1月の前半はないものと考えるくらいのスケジュール感が必要になります。
また、今年9月より弊社フィリピン本の第2版が、出版されました。
上記のようなフィリピンへの進出実務を最新の情報にアップデートすると共に、弊社フィリピン拠点における6年間のコンサルティング実務の経験を盛り込んでまとめ直したものとなります。
中でも本著はフィリピンの基本的な投資環境から、設立、法務、税務、会計、労務、M&Aに至るまでフィリピンでのビジネス展開に必須な情報を網羅的に収録していますので、
是非、本屋又は弊社宛にお問合せ頂き、手に取っていただけますと幸いです。
以上、今週もどうぞよろしくお願い致します。