フィリピンの出生率の高さについて

こんにちは、フィリピン駐在員の田辺です。

フィリピンはアセアン諸国の中では少子高齢化を迎える時期が一番遅いと言われています。今回はその理由を一般論も交えながら、皆さんと一緒に考えていきたいと思います。

アジアの他国についても言えることですが、フィリピンは非常に若年層の人口比率が高く、2011年の人口ピラミッドは以下の図のようになっています。

出所:U.S. Census Bureau International Data Base

フィリピンの人口ピラミッドは少子高齢化が慢性的に進む日本とは対照的に、未来の発展を感じさせる人口分布ということができますが、これはフィリピンの出生率の高さが生み出していると言えます。
フィリピンの出生率はデータのある1960年の7.15人(世界銀行)以降は年々減少しています。しかし、2010年の数字でも出生率が3.14人(世界銀行)というのですから我々日本人としては驚きを隠せません。

フィリピンの出生率が高い理由としては、まず、第一次産業である農業従事者の就業割合が33%(国土交通省、2010年推計値)と依然として高いことが挙げられます。農村部においては、労働力を確保するために出生率が高くなるというのは、世界共通の現象です。国の近代化に伴い産業の推移が始まり、第一次産業である農業から工業・サービス産業へと移行していくと、農村部における労働力の補充という意味での出生率は減少します。その代わりに、変化した産業構造に対応するため、子供に教育を与えていく必要が生まれます。そうなってくると、教育の効率的な投資という観点から、出生率の高さ、子供の多さというのは逆にネックになってきてしまいます。なぜならば、一般家庭において子供が9人も10人もいる場合、全員に高等教育を与えようとすると、学費にいくらかかるか分からないからです。

国の近代化や産業構造の進展と出生率の低下は相関関係にあり、どの国も直面している問題のひとつであると思います。フィリピンも今後、産業構造の進展が進むと出生率はもっと下がってしまうかもしれません。

しかし、フィリピンの出生率が高いのにはまだ他の理由があると考えられます。フィリピンでは人口の約90%がカトリックであり、カトリックはその戒律で離婚や人口中絶を禁止しているからです。人口中絶禁止についての議論はここでは致しませんが、そうした諸々の状況もあり、フィリピンの出生率はラオス、カンボジア、ネパールといった他の発展国よりは低いものの、他のアジア諸国のものと比べて高い数値となっています。

私がフィリピンに赴任してきて2週間が経ちましたが、どこへ行っても若い人達で町やレストランはにぎわっており、特に法律上月に2回ある給料日には町にいつも以上の活気が生まれます。この活気を見ていると、国に活力を与えるのは次世代を担う子供や若い人達なのだと本当に強く実感します。

しかしながら、確かに華やぐ街がある反面、路地裏や街角には貧困にあえぐ人達や、ストリートチルドレンもたくさん見かけます。子供を持つ親としては、彼らにもどうにか明るい未来を与えてあげたいと私は思います。貧困、ストリートチルドレンの問題も一言では片づけることができません。この内容についてはまたの機会に触れたいと思います。

今後の大いなる発展の可能性と共に、問題も抱えつつ、今日もフィリピンマニラは力強く活動しています。
この国のパワフルさに負けないように、この国をリードできるように、我々もしっかりお客様に貢献し、よい仕事をしていこうと思う今日この頃です。

以上

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