メキシコでは賃金は安いのに、従業員を保護する制度が多いため、結果として総人件費でみると「思ったよりも安くならなかった」という声を聞くことがあります。例えば、PTUやアギナルド(Aguinaldo)、有給休暇取得時に25%を割り増しするバケーションボーナスなどが代表的なものでしょう。そして、忘れてはならないのが、社会保険料の会社負担割合です。
ご存知の通り、日本の社会保険料は「労使折半」と言われるように、会社と従業員がほぼ同額を負担しています。しかし、メキシコでは従業員が負担する社会保険料割合は少なく、多くを会社が負担する制度になっており、いわゆる法定福利費の金額が思っていた以上に多くなっているケースがあるのです。
もちろん、社会保険料は給料額に一定の比率をかけて計算されますので、高い給料をもらっている人であれば、納めるべき社会保険料も大きくなっていきます。
しかし、この支払うべき社会保険料は無限に上昇していくものでもありません。上限額が存在します。そのため、給料が一定の金額を超えた人に対する社会保険料の金額は同じになります。
メキシコでは、給料額に対して従業員が数%、会社が30~40%の割合で社会保険料を支払う必要がありますが、上記のように一定の金額を超えた給料をもらっている人に対しては、結果としてその割合が下がることになります。
もし、納めている社会保険料分のメリットを受けられるのであれば、給料額に応じて上がっていく社会保険料を納めることに納得は行きますが、メキシコで生活しているほとんどの日本人駐在員は、これらのメリットを受けることがありません。
健康保険が適用されるメキシコの病院に行くことはほとんどないでしょうし、メキシコの年金を受け取るにしても帰国をしてしまえば手続が煩雑です。そして、メキシコと日本は社会保障協定を締結していませんので、結局は“保険料の掛け捨て”といったことになってしまいます。
メキシコで働くということは、メキシコ経済に貢献することでもありますので、税金や社会保険料を納めるということは必要な事ではあります。
しかし、支払った分が自分たちに返ってこないとなると、必要な事ではあるのですが、頭ではわかってはいても納得はできない部分があるのも確かです。
株式会社東京コンサルティングファーム メキシコ拠点
黒岩洋一
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