海外進出で現地法人においての減給制度

人事評価制度

 

世界経済がグローバル化する中で、優秀な外国人を獲得し、海外のリソースを求めて
海外進出を行う企業様も増えているのではないでしょうか。

メキシコはGDPの順位は15位ではありますが、中南米の中ではブラジル(8位)に次ぐ順位となっており、今後も成長が期待できる国です。
またメキシコにおける日系企業数合計は2017年10月時点で1,117社となっています。

そんな中、メキシコ進出を既にされている企業様の中にはこんな声があります。

 

「日本本社と同じような形式で人事評価制度をメキシコで導入したい」

「評価が低かった従業員に日本と同じように減給対処をしたい」

 

もしかしたら皆様の中にもこんなお悩みの方がいらっしゃるではないでしょうか。

そこで今回はメキシコにすでに進出されている企業様向けに、適正な人事評価制度における減給方法をご紹介できればと思います。

 

1.メキシコ労働者を守る労働法

まず減給対処についてお話する前に、メキシコの労働法について知っておく必要があります。

メキシコの労働法は1917年のメキシコ憲法に基づいて、1931年に米国の労働法をモデルとして連邦労働法として発効されました。
当時の時代背景により、労働者への保護的な傾向が強い特徴があります。

 

またもう一つの特徴としましては、メキシコでは「労働者利益分配(PTU)」と呼ばれる制度が定められており、企業は課税所得の10%を従業員に分配する義務があります。
そういった背景があるため、多くの日系企業では、メキシコ労法が、頭を抱える悩みの種に
なっています。

※今回の記事ではPTUについては、記述しておりません。

 

2.そもそもメキシコで減給は可能なのか?

メキシコでの減給は、可能です。但し、企業側に大きなリスクがあります。
そのリスクの一つとして減給された従業員は不当解雇の退職補償金を請求し退職することができるという事があります。

 

そうなった場合、企業側は、
給与3ヶ月分 + 勤続年数1年につき20日分の給与
の金額を退職補償金として従業員に支払う必要が発生します。

またIMSS(社会保険庁)からも触発される可能性が発生しますので、減給を行う際は、前提として一度退職扱いをし、給与設定をし直し、IMSSの登録をし直す必要が発生します。

こういったリスクや手間があるため、多くの企業では減給は行っていないのではないかと思われます。

 

3.どのように減給制度を人事評価制度に組み込むか?

考えられる方法としては、下記の2つではないでしょうか。

 

  • 昇給をさせない

⇒2019年最低賃金の上昇率が16.2%、インフレ率も上昇している中、昇給をさせない事が実質的な減給対処になります。昇給はメキシコの法律上義務はありません。
また多くの企業で、従業員が、最低賃金が16%上がったのだから給与も同じくらい上げてくれと訴えてくると話をお伺いいたしますが、法律上、最低賃金以上の給与を与えてさえいれば昇給させる必要は御座いません。

 

  • 給与を毎月基本給とボーナスという形式で分ける

⇒基本給の部分を最低賃金以上の金額で設定し、ボーナスの部分を能力及び評価に合わせた変動をさせる方法になります。

但し、この方法の難しい点としましては、すでに雇用している従業員の給与体系を変えるという事になります。給与体系を変えるだけでも基本給を変えることとなるため、上記にも記載しましたように実質的な減給となり、それに対するリスクが発生します。
また実施するにあたって就業規則等も修正し、再度従業員に一筆してもらう必要が発生します。

 

4.最後に
人事評価制度を構築するにあたって、減給をさせる目的としては、決して企業の内部留保を増やすためではないという事を忘れてはなりません。
人事評価制度の目的も人件費を調整するためではなく、教育のためと考えていかなければなりません。

 

また私たちは、経営をしていく中で人事採用と教育のバランスを考える必要があります。
一般的に採用を強化し、人選をするのであれば、教育にコストをかけずに済みます。
逆に採用を緩くした場合、教育制度の強化が必要になります。

 

採用 コスト高 ⇒ 教育 コスト低
採用 コスト低 ⇒ 教育 コスト高

 

しかし、メキシコでは多くのケースで、コストをかけ人選し採用したとしても実際に働いてみてから企業に見合った人ではなかったと思わされることがあります。それは人事採用、採用面接等における文化の違いの影響があるためです。

そのような状況下において本当に見直すべき部分は、採用ではなく人事教育と言えます。

今回取り上げた減給対処も、頑張っている従業員とそうでない従業員の差をしっかりとつけ、教育に結びつけていく必要があります。
そして最終的には、すべての従業員がパフォーマンスを上げ、同じ経営理念を持つことが理想像になります。

 

人事評価制度の構築方法については、専門性が問われますので
残念ながら今回のブログではすべてをお話することはできません。

詳細に関して知りたい方はお問合わせいただければと思います。

ぜひみなさまのメキシコビジネスを加速させるためにも人事評価制度を
よりよく設定し、組織マネジメントに役立てていただければと思います。

 

最後までお読み頂きありがとうございました。

 

 

株式会社東京コンサルティングファーム メキシコ拠点
渡辺寛

 

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