繰越欠損金とPTUについて

税務

こんにちは。

東京コンサルティングファームメキシコの田村彩紀です。

今週は、繰越欠損金とPTUに関して記載をいたします。

 

 

質問)

メキシコにおける繰越欠損金について教えていただけますでしょうか。

また、繰越欠損金はPTUを計算する際に考慮することができないと聞きました。なぜでしょうか。

 

回答)

メキシコでは、繰越欠損金の利用は、10年間可能とされております。

(日本では、平成30年4月1日以降の事業年度は10年間可能、それ以前は9年間可能とされています。)

 また、ご認識の通り、繰越欠損金はPTUの計算時には、考慮することができないとされております。その理由は、繰越欠損金とPTUの性質の違いを考えていくと納得いただけるかと存じます。

繰越欠損金は、当該年度において赤字となった場合、翌年度以降の課税所得の対象となる、黒字分と相殺できることを意味いたします。つまり、繰越欠損金は、複数の事業年度が関係する事項といえます。

一方、PTUについてですが、多くのメキシコ駐在員の方にとって馴染みがあり、『課税所得分の10%を従業員に還元する』ということで認識をされているかと存じます。

ここで、繰越欠損金との性質の違いをみていく際に、に重要となるのが、<対象となる事業年度>です。

PTUは、事業年度毎で計算され、事業年度間でかかわりがあるというわけではございません。そもそも、PTUのコンセプトは、当該事業年度で出た利益(課税所得)を、その事業年度に働いていた(利益に貢献した)従業員に分配するというものですので、事業年度ごとでPTUの算出が行われます。

 

上記を簡潔にまとめますと、

繰越欠損金 … 複数の事業年度が関係する。

PTU … 事業年度ごとに計算が行われる。

ということとなります。

 

もし、繰越欠損金がPTUに考慮されてしまうとなった場合、それは、過去の赤字が該当事業年度に加味されてしまうこととなり、その事業年度の実績にかかわらず、利益が減ってしまうことを意味してしまいます。それでは、そもそものPTUのコンセプトである <<当該年度における従業員の会社貢献(利益創出)に対する分配>>ということが考慮されていないこととなります。

 

長い説明となり恐縮ですが、繰越欠損金とPTUのそれぞれの内容ならびに性質の違いを踏まえて、『PTU計算において、繰越欠損金は考慮されない。』ということを理解していただけますと幸いでございます。

田村彩紀

 

 

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