メキシコの投資動向

現在メキシコに新規で進出する企業のおよそ9割 が自動車関連企業であり、その内の9割がバヒオ地区に進出しています。バヒオ地区と言ってもその面積は広大で日本の本州と同程度の面積がありま す。メキシコに新規で進出が考えられる地域は3つ程ありまして、1つがこのバヒオ地区、2つにD.F.(メキシコシティ:スペイン語ではデーエフェと発音)が存在する中部地区があり、最後に北部地区。この3つの地域に日系企業の殆どが進出しています。時代を遡ると、古くは30年 ほど前からメキシコへの日系企業の進出があったのですが、最初はD.F.地域に日系企業は進出していました(メキシコで一番人口が多い地域であり、所得水準も高い地域)。その後20年程前から北部地区(ティファナとかが有名です)に自動車関連の企業が進出を開始し、アメリカ向けの自動車及 び部品の製造を始めました(メキシコで一番人件費が安い地域であり、フォードやGMの進出は当初このあたりに集中、日本からもトヨタがティファナに進出しています)。ただ、13年 前に大きな政権交代がありました(日本でいうと自民党から民主党になったぐらい大きな政権交代)。新政権のPANは麻薬の撤廃を掲げ、その結果、麻薬組織とメキシコ政府が大きく対立することになり、この北部地域の治安が一 気に悪くなりました。メキシコの低所得者にとっては麻薬の取引もビジネスの内(麻薬組織だけが麻薬の取引を行っているのではなく、一般市 民にとっても麻薬の取引は生活の糧を得るための大切な仕事)であり、その麻薬の取引に政府からメスを入れられてしまうと、北部地区の市民 は生活ができなくなってしまいます。その為に、職を失った彼らは強盗や略奪に走り(選択肢が他に無くなってしまったため)、北部地区の治 安は一気に悪くなったのです。そのために日系企業のメキシコ北部地区への進出は著しく減少し、既に北部地区へ進出している企業はアメリカ に居住を持ちアメリカから仕事の為に国境を越えてメキシコで活動するようになり、メキシコの北部地区は日本人が住めない地域へと変貌を遂 げました。

この様な時代背景により、比較的に人件費の安いバヒオ地区に日系自動車メーカーの目が向けられ10年ほど前から日系企業の進出が多くなったのです。特にここ5年 は続々と大手メーカーの工場が建設され、これに付随して中小の部品メーカーの進出が爆発的に増えました。具体的な都市名で言えば、アグア スカリエンテス、ガダラハラ(正式にはグアダラハラ)、イラプアト、レオン、シラオ、セラヤ、サンルイスポトシ、サラマンカなどでしょう か。これらの地域において、今年及び来年度には、大手メーカーの工場が次々に操業を開始し、それに伴い殆どの部品メーカーの工場も操業を 開始します。また、これらの地区へ行くためにはDFから車で片道5時 間~掛かります。その為に当社もいち早くこのバヒオ地区への事務所の開設をしなければならないと私は考えています。

今、メキシコは自動車産業のラッシュが起きていますが、メキシコの国内では次の産業の発掘が既に始まっていま す(日系企業の中においても)。次の産業はずばりエネルギー、教育、通信。このうち特に注目されているのがエネルギー分野であります。こ のエネルギー分野について、8月~9月中に新たに法案が提出されるのですが、日系企業の注目はこの提 出された法案に、憲法改正および民間の参入が具体的に含まれるか、含まれた場合にその範囲はどうなるのか、ここに注目が集まっています。 メキシコには大きく3つの政党が存在します。1つに現在の第一党であるPRI党、2000年から2012年 まで第一党であり現在は第二党であるPAN党、最近勢力を拡大しつつある第三党のPRD党、 これらの3党によってメキシコの議会は牛耳られています。このうち第三党であるPRDが この憲法改正・民間参入に反対しており、PRIとPANは基本的な方向性としては民間参入を容認するとしていますが、そ れらの党の中にも賛成派と反対派がおり予断を許さない状況です。特にPAN内部のマデロ派とコルデロ派の対立が目覚ましく、マデロ派に反対する為にコルデロ派は反対票を投じるのでは? とも言われています。現在のペニャ・ニエト政権の印象としては、政党間において対立の少ない政策から手をつけています(教育・通信等はそ の最たるもので、既に公布済み)。また、ペニャ・ニエト政権はアジア外交、アメリカ外交等にも力を入れており海外からの評価も高いのが現 状です。先日、日本にもペニャ・ニエトが訪問していたかと思いますが、これもアジア外交に力を入れている為に他なりません。このエネル ギー関連の法案(民間参入可の場合)が通れば、今後メキシコは日本にとって更に魅力的な投資先になるものと思われ、メキシコもそれを温か く迎え入れてくれることでしょう。まずは8月か9月に行われる法案提出、そして12月15日の閣議決定まで、この話題がホットな話題になることは間違いありません。あと半年間、要注目です!

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