メキシコの株式会社における取締役会について

経営

 

今回はメキシコの株式会社の機関設計に必要な要素のうち、取締役会についてお話します。

 

取締役が2名以上いる場合は取締役会(Consejo de Administración)が構成されます。ただし、取締役を一人だけとする唯一代表取締役(Administrador Único)を置くこともできるため、取締役会を置かずに唯一代表取締役を選任して対応しているケースも多く見受けられます(商事会社一般法142条~163条)。

 

[取締役の要件]

商事会社一般法において、取締役に選任できない者は「法律によって事業を行うことが認められない者」とだけ記載されており、実際にはメキシコにいない者(非居住者)であっても取締役になることが可能です(商事会社一般法151条)。そのため、実際に現地へ駐在しない本社の社長や役員が取締役となっているケースもあります。
なお、取締役(唯一代表取締役を含む)は株主である必要はありません。

 

[招集通知]

取締役会の招集は、一般的に当該取締役会の5日前までに、書面による通知等の適切な方法で、開催日時および場所、議題の通知が行われます。
ただし、取締役全員が会社内に存在する等の一定の状況によっては招集手続は要求されません。

 

[開催場所]

基本的には当該会社の住所において開催されますが、取締役会の決定により、支店、代理店、その他メキシコ内のいかなる場所においても開催することができます。

 

[決議]

取締役会については、取締役会構成員の過半数の取締役の参加により、法的に招集が認められ、当該参加取締役の過半数の賛成により決議されます(商事会社一般法153条)。

 

[取締役会の権限の範囲]

取締役会は株主総会に干渉する権限はありません。これを前提として、取締役会は、連邦民法2554条に従い、会社の業務を推進・指揮する権限を有し、会社の目的達成に関するすべての契約・行為・取引を執行または履行し、すべての行政または司法当局における訴訟・債権回収・管理および所有権に関する行為のために必要な権限を持つものとされます。
また、これらの業務を執行するに当たり、同法2587条に基づく特別な定めを要する以下の権限についても有するものとされます。

 

[取締役会における特別な権限]

・会社の資産の売却、租税の支払、その他の処分、抵当権または質権の設定等、所有権に基づいて行われること
・金銭の貸付、社債の発行、割賦での購入、信用貸付の実行、および流通証券の購入
・会社の事業の指揮、運営、監督、および資産の管理、並びに会社の事業を達成するためのすべての契約の履行
・法律により要求される帳票、報告書、財務諸表の準備、承認、並びに監査役および株主への提出。株主に対して行う、会社にとって有益な決議の提案および提言
・あらゆる動産、不動産、権利、営業権、フランチャイズ、ローンの取得並びに会社の事業目的のために必要または推奨されるその他のものの購入または売却、リース、抵当権や担保権の設定および譲渡を行うことに関しての、会社が従うべき計画や方針の提言
・会社役員や従業員の自由な任命および解任、権限の修正、報酬の確定および義務の履行を保証するための社債額の決定
・個人、法人、マネージャー、役員または代理人に対し、権限の全部または一部を委任すること、並びに包括代理権および限定代理権の付与および取り消し
・メキシコ法および定款により付与されている株主総会により保留されていないその他すべての権限

 

[取締役会の構成]

取締役会を置く場合には、各取締役の役職名は以下のとおりとなります。

•議長(Presidente)
•秘書役(Secretario)
•財務役(Tesorero)
•取締役(Ejecutivo)

 

これらの役職のうち、議長は必須ですが、それ以外の役職については任意となります。アメリカにおいては、これらが執行役員の役職名として使用されることから混乱を生むことがありますが、これらの役職はあくまでも取締役会内でのみ利用する役職であり、公式の役職ではありません。
また、取締役の人数に法の制限はありません。そのため、労働者利益分配金(PTU)対策および労働法7条(外国人1人に対して、現地人9人を採用するという規定)の対策として、すべての駐在員の肩書を取締役とする会社も存在します。

 

[少数株主による取締役の選任]

取締役が3名以上いる場合で、少数株主持分割合が25%未満の場合には、定款にて取締役選任における少数株主の権利を定めることができます。
また、少数株主持分割合が25%以上である場合には、当該少数株主は1名以上の取締役を選任することとなります。

 

[唯一代表取締役(Administrador Único)]

上述のとおり、メキシコでは取締役会を置かずに唯一代表取締役を置くことができます。
唯一代表取締役とは、取締役会を設置せずに1人の取締役に全権を委ねる経営機関です。
メキシコにおいては、現地法人を代表する者を指名し、さらに代表権の内容を公正証書に明記しなければなりません。会社の代表権は統括代表権と限定的業務のための特別代表権が存在し、いずれの場合も、公正証書への記載により認められます。

 

総括代表権は、下記の3つから構成されています。
・訴訟と取立行為
・経営管理
・所有権による行為

 

なお、統括代表権を持つのは、基本的に唯一代表取締役または取締役会であり、公正証書に代表権が記載されていない者は、取締役や社長であっても、法的に会社の代表者としては認められません。

 

[経営審議会]

メキシコにおける公開会社など一定の企業においては、取締役会の他に経営審議会を設置しなければなりません。経営審議会の制度は、商事会社一般法が1976年に改正された際に新設されました。
経営審議会の構成員は、株主総会により選出され、その権限は会社の業務の一般方針の決定、取締役の業務の監査などに及びます。

 

以上、お読みいただきありがとうございました。

なお、本記事は2019年10月時点の内容となっております。最新情報やより詳細な情報は弊社サービスのWiki Investmentをご利用頂きたいと思います。Wiki Investmentへの登録は、下記のリンクからお願い致します。

 

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