メキシコの株式会社における監査役について

経営

 

今回はメキシコの株式会社の機関設計に必要な要素のうち、監査役についてお話します。

 

メキシコにおける会社設立に当たっては、取締役の他に監査役を1名以上置かなければなりません。実務上、多くの企業においては弁護士・会計士・コンサルタント等の第三者を監査役に任命し、会社設立を行っています(商事会社一般法164条~171条)。

 

[選任]

監査役は株主総会が選任することと定められています。(商事会社一般法181条2)

なお、監査役が欠員となってしまった場合には、取締役会は、3日以内に臨時での株主総会を招集し、監査役の選任をしなければなりません。取締役会による招集ができない時は、株主は、株主の請求に基づいてその会社所在地の裁判所に株主総会の招集を委任することができます。

招集できなかった場合、または、株主総会が開催されたが監査役の選任がなかった場合には、株主の請求に基づいてその会社所在地の裁判所が監査役の選任をすることができます。

 

[要件]

商事会社一般法165条には、監査役に選任できない者の要件として、以下の項目が列挙されています。
つまり、下記の項目に該当しない者であれば誰でも、専門的な知識を有しない者であっても、監査役になれるということです。

・法律によって事業を行うことが認められない者
・当該会社の従業員
・株式25%以上を保有する関連会社の従業員(恣意性の介入が認められるような場合)または株式50%以上を保有する関係会社の従業員
・取締役の直系血族。四親等以内の傍系血族もしくは二親等以内の親族

 

株式25%以上を保有する関連会社の取締役に関しては、法律には従業員以外は監査役になることができると記載されているため、形式上は特段問題なく監査役に就任できることになります。
ただし、法の立法趣旨から、恣意性の排除のために監査役は第三者であることが求められています。多数の株式(25%以上)を保有している関連会社の取締役に関しては、恣意性の介入が考えられ、監査役にする一定のリスクがあると解釈することができます。
そのためにメキシコ新規進出企業の多くは、弁護士・会計士・コンサルタント等の名義を借り、当該弁護士等を監査役に選任しています。

 

[権限および任務]

・監査役は、商事会社一般法152条で設定された取締役等の保証金の有無等をその権限により確認することとされています(商事会社一般法166条)。

これは取締役等が職務に就く前に提供しなければならない保証金に関連する規定であり、監査役はその義務が履行されたかどうか確認する必要があります。また、監査役は保証金を管理する必要もあるため、保証金が存在しないとき、滅失する危険があるとき、もしくはその他の違法行為に気付いたときには、株主総会にその旨を報告しなければなりません。
以下、監査役の具体的な権限および任務です。

 

・取締役に対して、月次決算書の提出を要求することができる
・監査役は、1カ月に1度、会社の帳簿や文書、および現金残高を監査するまた、監査役の調査・監査の権限は無制限であるために、当該会社のすべての帳簿および文書を監査することができる
・年度ごとに株主総会に提出する財務諸表に関する報告書を作成しなければならない取締役または取締役会は、年度ごとの財務諸表を、会計期間の末日から3カ月以内に作成し、これを証拠書類および営業報告書と合わせて、株主総会開催日の最低1カ月前までに監査役に提出する監査役はその提出を受けた日から15日以内に、作成された証拠書類および営業報告書に対する意見および提案を記載した、報告書を作成しなければならない(商事会社一般法173条)
・取締役会および株主総会の議案に相当と判断される事項を追加することができる
・取締役会等が何らかの理由により株主総会において株主を招集しないとき、またはその他相当な理由があると認められるときには、監査役は通常総会、または臨時株主総会を招集することができる
・監査役は、取締役会に出席することができる。取締役会においては、監査役の発言権は認められているが、議決権は認められていないまた、取締役は、監査役に取締役会の日時を通知する義務がある
・監査役は、会社の業務を無制限に、かつ、常時監査することが認められている
・監査役は、株主総会において株主からの告発を報告する義務がある商事会社一般法では、株主は取締役の違法行為を書面により監査役に報告することができる。監査役は、その告発を株主総会に書面により報告し、かつ、これを検討して相当と思われる提案をすることが求められる

 

[任期]

監査役には任期が定められており、任期を定款に記載しなければなりません。通常の任期は1年とされ、毎年監査役を株主総会にて選任する必要があります。
一方で、商事会社一般法 154条(取締役に関する内容ですが、171条にて監査役としても適用される旨が記載)において、任期満了となった場合であっても新たな監査役が指名されるまでは、現在の監査役は継続して任務を行うという旨が記載されているため、通常株主総会での再任の決議を得ないままであっても実務上は自動承認となっています。

 

[解任]

監査役は、株主総会によりいつでも解任することができます。

ただし、多数派株主は自らが選任した監査役だけを解任することができ、持分割合25%以上の少数派株主の選任した監査役については解任することができないとされています。

 

[報酬]

監査役の業務は有償とされており、定款に監査役の報酬が定められていない場合は、株主総会の決議により定めることとなります(商事会社一般法181条3項)。ただし、決議によって報酬をなしとすることも可能であるため、”無報酬”で運営している会社が多いように思われます。
また、定款に報酬額の定めがない場合には、株主総会の決議により定めますが、監査役は、その報酬額が不当だと考える場合には、連邦民法2607条を適用することができます。

 

参考:連邦民法2607条

役務の提供に対する報酬額は当事者間の話合い、およびその土地の慣習に基づいて定めるべきものである。そのため、監査役の報酬額は会社の重要性、利益の額、監査役の業務および監査役の社会的・技術的重要性を考慮して決定しなければならない。

 

[取締役の規定の流用]

監査役についてのその他の決まりにおいては、監査役の条項に直接定められていない場合、取締役の各条項(具体的には、商事会社一般法144条、152条、154条、160条~163条)を準用して判断するとされています(商事会社一般法171条)。

 

以上、お読みいただきありがとうございました。

なお、本記事は2019年10月時点の内容となっております。最新情報やより詳細な情報は弊社サービスのWiki Investmentをご利用頂きたいと思います。Wiki Investmentへの登録は、下記のリンクからお願い致します。

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