よく知られていることですが、メキシコは労働者保護のとても強い国です。
憲法や連邦労働法によって、労働者の各種権利が保障されており、裁判を行えばほとんどのケースで企業側が負けるとも言われています。
法定賞与やクリスマスボーナスと言われている「アギナルド(Aguinaldo)」、プレミアムバケーションといわれる「プリマ バカシオナル(Prima Vacasional)等の日本では考えられないような手当
二倍となる時間外労働と三倍となる休日出勤の割増賃金
慎重にならざる得ない懲罰の付与
また、興国特有の“予見しにくい”法律の改定による対応など、企業はこれらの金銭、そしてリスクのコストも考慮したうえでの企業運営を実施していく必要があります。
実際、2019年1月1日適用となった最低賃金は、過去に類を見ない最低賃金の上昇率(16.2%アップ)となりました。メキシコでは最低賃金の上昇率が通常の賃金交渉の目安にもされているため、労働組合が最低賃金同様の引き上げを求めた場合、企業にとってはかなりのコストアップになってしまいます。
●PTU
労働者保護の強いメキシコでも、最も多くの日系企業を悩ませているのが、労働者利益分配金といわれるPTU(Participación de los Trabajadores en las Utilidades de las empresas)制度ではないでしょうか。
これは、厳密言えば計算式が異なりますが、課税所得の10%を従業員へ分配しなければならないという制度です。この制度により企業は利益を出したとしても、「法人所得税30%+PTU10%」合わせて40%が外部へ流出することなります。
そして、何よりも頭を悩ませるのが、このPTU制度は法律で計算式まで定められているため、“実際の従業員の貢献度”によって分配額を決定することができない点です。
●PTUの計算方法
では、実際にPTUはどのように計算されているのでしょうか。
具体的な計算方法は割愛しますが、先ずは分配する総額を半分に分けます。
そして、それぞれを対象期間(1月~12月)における①勤務日数(50%)と②給与額(50%)に基づいて計算して最終的に①と②を合算するという方法を取ります。
つまり、勤務日数が多ければ多いほど、給与額が高ければ高いほど受取れるPTU総額が多くなるということです。
●昇給とPTU
メキシコでは、年々、物価は上昇していますので、ほとんどの企業で年1回の昇給を行っています。そして、先述したように、最低賃金の上昇率が賃金交渉の材料に使われています。
その一方で、昇給を実施する際にはメキシコ独特な制度、特にPTUをどのように昇給と関連付けるのかで悩む企業も少なくありません。
「PTUのことを考えると昇給率を高くしてよいの判断がつかない」
「今期は利益が出ることが分かっているので、PTUが分配される。
だから、昇給率を抑えたいが現地スタッフが納得するだろうか?」
もしかしたら皆様の中にもこんなお悩みの方がいらっしゃるではないでしょうか。
私たちは、このようなお悩みに対して、適正な昇給制度の構築方法をご紹介できればと思います。
●どういった昇給制度がメキシコで有効なのか?
では具体的にどのような昇給制度が良いのでしょうか?
それは・・・
経営理念や戦略を理解した社員が自ら設定した目標を、社員自らの頑張りで達成してもらい
それを絶対評価で昇給につなげる制度です。
つまり昇給制度と人事評価が合わさった制度になります。
昇給制度の構築方法については、専門性が問われますので
残念ながら今回のブログではすべてをお話することはできません。
詳細に関して知りたい方はお問合わせいただければと思います。
ぜひみなさまのメキシコビジネスを加速させるためにも昇給制度を
よりよく設定し、組織マネジメントに役立てていただければと思います。
最後までお読み頂きありがとうございました。
株式会社東京コンサルティングファーム メキシコ拠点
黒岩洋一
※)記載しました内容は、作成時点で得られる情報をもとに、最新の注意を払って作成しておりますが、その内容の正確性及び安全性を保障するものではありません。該当情報に基づいて被ったいかなる損害についても情報提供者及び当社(株式会社東京コンサルティングファーム並びにTokyo Consulting Firm Co., Ltd.)は一切の責任を負うことはありませんのでご了承ください。