こんにちは、株式会社東京コンサルティングファームの小林です。
前回まで、社員の考える責任と会社の期待する責任をすり合わせるための評価制度について述べてきました。
今回は、多くの評価制度で取り入れられている成果主義の問題点について考えていきたいと思います。
まず、成果主義について簡単におさらいです。かつての高度成長期に採用されてきた年功序列型の人事制度が多くの企業にとって現状にそぐわなくなりました。そこで注目されたのが成果主義です。業務を遂行する中でのプロセスと結果についてを評価対象として、社歴や学歴などではなく目に見える成果で評価を行うというコンセプトです。欧米ではもともとこの成果主義での評価が主流ですが、日本でもバブル崩壊以降に多くの会社が取り入れています。
成果主義は一般に以下のメリット・デメリットがあると言われています。
メリットとしては、基本的に会社の業績に連動するので、会社の売上・利益が多いときは社員の給与アップにつながり、その逆もしかりということです。また、社員にとっても評価基準が明確になり、モチベーションにつながるということです。デメリットとしては、営業職などの成果が見えやすい職種には導入しやすいが、管理部門などでは難しい点、また自分さえよければよいという個人主義に陥りやすい点などが指摘されています。
筆者は成果主義を評価に用いることには賛成です。昇給や賞与が何によってもたらされるのかというと、会社の成果であり、その成果は社員の成果によって実現しているわけなので、それを正当に評価することは社員にとってもわかりやすく納得できるものであると考えます。ただし、ここで問題が1つあります。それは、成果主義で評価されるものは基本的には「短期」の成果であるということです。当然評価期間における成果を測定するので、そうならざるを得ません。しかし、会社が社員に求める成長というのは、短期的な成果だけではありません。以前にお話しした、昇進させるべき社員を発掘するというのも、評価制度の重要な目的です。企業にとって、経営層に近い人材ほど、短期だけではなく長期的な視点を備えていなければなりません。さらに、短期・長期の時間軸だけでなく、自分の目を向ける範囲、空間軸とでも言いましょうか、ここの部分でも自分自身だけでなく、部門や事業部、拠点レベル、もしくは会社全体、業界全体、社会全体という風に広く持つことが求められます。
この長期、広空間で思考・行動できる人材を成果主義で評価することは難しいものです。こういう思考・行動をしていてもなかなか短期で成果を出せるということは少ないのですが、会社を大きく変化させることや次世代の経営者を育成するという観点では、成果主義では表れないこの物差しで人材を評価する仕組みが非常に重要になります。
つまり、短期の成果を評価しつつ、長期軸や空間軸でマネジメント人材やその候補を評価できるハイブリッド型の評価制度が有効になると言えます。
次回は、ハイブリッド型評価の片方の軸になる、思考・志向の評価はどうすればよいのか?について解説したいと思います。
お読みいただきありがとうございます。