タテの対立、ヨコの対立

僕たちの人間関係において、”対立構造”はいつ、いかなるときでも生まれ得る。

友人と、恋人と、部下や同僚と、会社と、社会と、
僕たち人間が感情の生き物である限り、この”対立構造”を避けることは不可避である。

理屈だけでは納得できない部分があるからこそ、僕たちは人間関係に苦しむのだ。

 

僕も過去に数多く、人との対立を生んできたが、つまるところ、これはタテとヨコの2パターンで起きることが多いことに気づいた。

ちなみに僕がマレーシアに駐在していた際に経験したのは専ら”タテの対立”であるし、
僕が現在、国際事業部として他部署より高い成果(売上、利益)を叩き出してやろうと思うこの気持ちは”ヨコの対立”の発想だ。

今回の内容は、組織論としての要素が多く含まれている一方で、バランス・スコア・カードで見たときに”財務”の面も含める意図も込めてB/S(貸借対照表)やPL(損益計算書)の話も交えて、これらの対立についてどうトップマネジメント、ミドルマネジメントとして対応していくか、纏めようと思う。

 

▼”タテの対立”はBS思考

結論から言ってしまうと”タテの対立”の根本原因は”視座の違い”であり、

この”視座”とは、社長が貸借対照表(以下B/S)を基にすべての意思決定を下すのに対して、社員は自分たちの売上、利益、給与といった損益計算書(以下PL)を基に判断するために起こる、「視点の高さのズレ」のことである。

 

最もこの”視座の違い”を表す良い例で、営業マンの値引き対応が挙げられる。
会社の営業マンが自身のノルマ達成のために、お客様からの値引き交渉に安易に応じているケースだ。

このとき、営業マンが頑張って受注件数を増やせば増やすほど前年対比で確実に売上が伸びることは予想できる。

 

しかし、単に受注単価を引き下げて受注件数を稼ぎ、売上を上げていた場合、まず間違いなく粗利益率が悪くなる。原価が変わらないからだ。

売上は増加しているのに、粗利益率は上がっていない又は下がっている、となると当然の如く営業利益や経常利益は全く改善されず、社員に還元するための利益の確保もままならない。

 

その結果、何が起こるかと言うと、社員が”貧乏暇なし”の状態に陥り、
「こんな頑張ってるのに何で給与で報いてくれないんだ」となる。

社長はB/Sから構築し、その後、事業おける収益構造を把握するためにPLを作る(もしくは感覚的にイメージする。)
それに対して、社員が見るのは目の前の売上や利益といったPLのみである。

先の例も、適切な販売戦略を組み立てて、これだけ売れば、これだけの利益が出て、どれだけの純資産の増加があるか、というイメージであるか否かで大きな結果の違いを生むだろう。

 

ちなみに少し本線から外れるが、販売戦略の実行の適切性は粗利益に出る。

事業によって生み出される売上や粗利益率を把握した上で、どんな貸借対照表を作っていくか、という社長の意思決定があって営業戦略は組み立てられるから、もしも適切にその戦略が実行されていないと、まず影響が出るのが粗利益なるのだ。

僕はこの「取った行動が結果的にどうB/Sにインパクトを及ぼすのか」という観点で考えることを”B/S思考”と呼んでおり、これの有無が”タテの対立”を生む原因だと考えている。

 

▼”ヨコの対立”はPL思考

”タテの対立”に対して、並列の部署やチーム同士での対立が”ヨコの対立”である。

組織のセクショナリズムも大きな”ヨコの対立”の一種であり、これが起きる根本的な原因を説明するのに役に立つのがPPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネメント)である。

PPMとは「市場成長率」と「市場シェア獲得率」の」2軸で事業の優位性を考えるマトリクスで、ある程度の規模になった企業の場合、事業部間での対立、特に「金の生る木」と「問題児」との間で対立関係が生まれやすい。

 

理由としては一方が黒字でお金を生み出しているのに対して、もう一方がその生み出したお金を投資していたり、または純粋に赤字事業を黒字事業が助けていたり、という状況が考えられる。

”ヨコの対立”はどれだけの収益を上げ、どれだけの利益を残したか、といった視点で生まれることが強く、僕はこういった考え方を”PL思考”と呼んでいる。

 

では、ここまでに挙げた”タテの対立”を生む”B/S思考”と”ヨコの対立”を生む”PL思考”のうち、どちらをより気にかけるべきか、どちらの対立が致命的となるのだろうか。

 

▼避けるべきはどちらの対立?

実は、少し前に当社に識学の方が来社した。その際に色々と話していたのだが、特に印象に残ったのは「姿勢のルール」と「行動のルール」の話である。

俗に言う「自分の立場を理解しないで批判や愚痴を言うような”位置ずれ社員”」を生まないためには、そんな社員を引き戻すための”組織のルール”が必要であり、その”ルール”は大きく2つにカテゴライズすることができる、という話だ。

それが「姿勢のルール」と「行動のルール」である。

  • 「姿勢のルール」とは本人の能力の有無に関わらず実践、順守することが出来るルールで挨拶、掃除、身だしなみ、などが挙げられる。
  • 「行動のルール」は順守するのに本人の能力を必要とするルールで売上目標達成、新規顧客開拓、などが挙げられる。

 

ちなみに、どちらのルールが大事かと言うと「姿勢のルール」である。

当然だが、これは会社の信じることをどれだけ信じる姿勢がある、そしてどれだけ実践しようとする姿勢があるか、という観点から設けられるルールだから、

順守できない=会社の意向の沿えない、という解釈になる。

 

そして、これが実は先の”タテの対立”と”ヨコの対立”とリンクしてくる。

タテの対立⇒”姿勢のルール”の違反

姿勢は誰にでも正すことができ、且つ、実践するのに能力はいらない。
実践するために必要なのは「どれだけ理解したか」という点だけである。

先に挙げた営業マンの例でも「どれだけ会社の販売戦略を理解し、適切に実践しようとしたか」という点に尽きる。

 

ヨコの対立⇒”行動のルール”の衝突

いわゆる能力差の対立であり、どれだけ「行動のルール」を守る能力があるか、が対立を生む根本原因となっている。

これは、仮説⇒検証さえ適切に繰り返すことができれば(つまり、PDCAを回せさえすれば)
あとは時間の問題となる。

 

このように、解釈できる。
ここで最も避けるべきは”タテの対立”である。

繰り返しになるが、「戦略の実行」という観点から見ると、適切に実行することには”姿勢のルール”が適用され(つまり、能力よりも正しく実行しようという姿勢や方針への理解があるか否か)

ここが正しく認識されていないことで”タテの対立”が生まれることが往々にして多い。

そのためにも社員は”B/S思考”を持った判断を下すための財務リテラシーは必要であり、トップマネジメントやミドルマネジメントの人間は、自分たちが”見る側”に居るだけでなく
”見せる側”に回り、如何にここの教育をするか、ということが”タテの対立”を生まないために必要となるのだ。

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