こんにちは。東京コンサルティングの徳田です。
1. はじめに
わが国では、消費者主権が叫ばれるようになり、1994年に製造物責任法(いわゆるPL法)が制定され、消費者保護がより強化されることになりました。そして、インドネシアにおいても、1999年には消費者保護法の一つとして製造物責任が明記されることになりました。
とは言え、わが国では、事業者に過失があった場合には不法行為責任として損害賠償請求をすることができる規定は、民法上規定されており(709条)、そもそもどこが違うのかという点について詳しく知られる方は少ないと思います。ましてやインドネシアにおいてはなおさらでしょう。
そこで、本稿ではインドネシアにおける製造物責任について、日本法と比較しつつ説明致します。
2. 日本における製造物責任法の意義
日本の民法709条において、不法行為に基づく損害賠償責任が出来るとされています。しかし、不法行為責任は、①不法行為②故意・過失③因果関係④損害それぞれの全てについて、被害者側が立証責任を負っています。相手方の故意・過失を立証する、これは訴訟実務上大変難しいことです。
他方、製造物責任法では、「製造物」の欠陥によって損害を被った場合、事業者の無過失責任が認められます。つまり、被害者は加害者側の故意・過失を立証する必要がなく、製造物責任に基づく損害賠償請求をすることが出来ます。この点が従来の民法上の不法行為責任と大きく異なる点です。(ただし、被害者側に過失があった場合、民法722条2項により過失相殺がされる。)
3. インドネシアでの製造物責任
インドネシアでも、日本法と同様の不法行為責任が規定されています。これに対し、製造物責任規定はどうでしょうか?
・無過失の抗弁
インドネシアの製造物責任規定では、日本とは異なり、無過失の抗弁が認められています。つまり、事業者が無過失であることを立証した場合には、責任を免れるということです。
・販売者が責任を負うか
製造者には当然責任が認められるとしても、販売者についても責任が認められるか否かについては、違いが見られます。インドネシアでは販売者についても製造物責任が認められます。これに対し日本では販売者は製造物責任の対象とはなりません。
・出訴期間
インドネシアでは4年、日本では10年の除斥期間が設けられています。
・裁判外紛争解決手続制度(ADR)
インドネシアにおいても、日本においても、いずれも裁判外で紛争を解決できる仕組みが整えられています。特にインドネシアでは、消費者保護法により消費者団体等による訴訟が認められています。