■法律改正重要論点紹介~最新の法律改正の状況をお送りします~
■労働大臣規則2015年第16号(6月29日施行)
上記施行から2ヶ月ほど経過しておりますが、ビザの申請期間等、具体的な実務上の変更も出てきております。改めて、当内容をまとめまして、変更点ならびに、問題を整理していきたいと思います。
(主な変更点)
①コミサリス役員までIMTA取得義務を適用
同規則37条は下記のとおり、規定しています。
(1) 各 外国人労働者 雇用者は局長が発行する IMTA を有する義務を負う。
(2) (1)項に規定の IMTA は保有義務は、海外に所在する取締役メンバー、コミサリス会メンバ
ー、或いは理事メンバー、役員メンバー、監事メンバーにも適用される。
従いまして、居住する、しないに関わらず、コミサリスにつきましても、IMTAの取得が義務付けられることになりました。先年末から、非居住者の取締役のKITAS,IMTA取得につきまして、労働省査察が来る事案が多く発生しており、その対策として、非居住取締役をコミサリスに変更することが一案として、ございましたが、この規定変更により、そもそも、コミサリスにもIMTA取得義務が明記されましたので、同対案は意味を成さなくなりました。一方、居住性につきましては、同36条には、外国人労働者の要件として、下記を記載しております。
(1) 外国人労働者 雇用者が雇用する外国人労働者 は、下記の要件を満たすことが義務付けられる:
a. 外国人労働者が就く予定の役職要件に応じた学歴を有していること
b. 外国人労働者が就く予定の役職に応じた能力認証状を有している或いは 5 年以上の職歴を有していること
c.付き添いインドネシア人労働者に対し専門性を移転する義務の表明書を作成。研修実施報告書で証明のこと
d. 6か月を超えて勤務している外国人労働者は納税者番号を有していること
e.インドネシア法人の保険の証書を有している、及び
f. 6か月を超えて勤務する外国人労働者の場合、国家社会保障への加入
コミサリスの居住義務を明文で規定しているものはございませんが、納税者番号(NPWP)の取得は、居住=KITAS取得を前提としているため、外国人労働者として、満たすべき当地での要件厳密に順守しようとすると、必然的に、KITAS,IMTAの取得をするということになります。その意味において、非居住役員を置いておくということは現実的に難しくなります。どこまで、コンプライアンスを重視するか、という問題もございますが、少なくとも、明文で法令がある以上、IMTA取得は必要と言えます。
②外国人(MGR以下)一人についてのインドネシア人雇用義務10人
同3条には、外国人ひとりに対してのインドネシア人雇用義務につき、下記のように記載しております。
(1)1人の 外国人労働者 を雇用する 外国人労働者 雇用者は、外国人労働者 雇用者の会社において少なくとも 10 人以上のインドネシア人労働者を雇用できなければならない。
(2) (1)項の規定は下記の者には適用されない:
a. 取締役メンバー、コミサリス会メンバー、或いは理事メンバー、役員メンバー、
監事メンバー
b. 緊急かつ差し迫った業務のために雇用する 外国人労働者
c. 一時的業務のために雇用する 外国人労働者
d. 興業サービス業のために雇用する 外国人労働者
この規定により、従来はBKPM長官令2013年第5号の第71条で商事駐在員事務所に限り外国人1名に対しインドネシア人3名以上の雇用が義務付けられていましたが、今回は株式会社(但し役員は除く)及び全ての駐在員事務所で外国人1名に対しインドネシア人10名以上の雇用が義務付けられました。
実務上の申請で問題になるのは、外国人雇用計画書(RPTKA)の申請です。この時に、外国人雇用の理由や、ポジション、給与のほか、インドネシア人雇用人数を記載します。この際に、10人以上の記載が必要になります。
しかしながら、こちらの記載は、採用計画であるため、実情と異なる場合でも、IMTA取得は可能です。その一方で、インドネシア人を一人指名して、技術移転をしなければならない旨は依然として存在しており、こちらの場合は、指名者との雇用契約書等の証跡が必要になります。
その意味においては実務上、外国人一人につき、技術移転のための採用として、インドネシア人ひとりは以前と変わらず、必要ということになります。
③高卒者のIMTA取得緩和へ
以前の大臣令(2013年12号)第30条第1項第d号にある「大学の卒業証明書」が、今回の大臣令(2015年16号)第38条第1項第f号では「外国人労働者が就く予定の役職に応じた学歴」に変更されておることから、高卒の方にも、IMTAの取得が明文上認められることになりました。
実務上、以前から、半年のIMTAの取得は可能でしたが、今回の規制の改訂で、1年間のIMTA取得できる旨は記載されておらず、現在、取り扱いは以前から、変更になっていないため、今回の規定は、実質的に、実務上、認められていた取り扱いが明文化された、という趣旨で捉えるのが適切かと思います。
➃IMTA取得プロセスの変更
IMTA取得プロセスにおいて、必要とされていた外国人労働者雇用管理局長宛の推薦状(TA-01)の規定が削除されました。従いまして、RPTKA⇒DPKK納付⇒IMTA⇒Telex という手続きになりす。国外インドネシア大使館での手続きのあとのIMTA取得が前倒しになったことで、IMTA手続きの遅延のリスクが増したと言えます。
以上が、今回の規制改訂の要旨となります。特に①につきましては、労働省査察時の指摘事項になることが予想されますので、早めの対策が必要となります。加えて、②③につきましても、実務上の取り扱いが、今後変更になるところですので、今後も引き続き、情報をアップデートしてまいります。