中国での退職金の税金について(2) Q&A

こんにちは、中国・上海の三輪常敬です。

Q, 1年前に日本の親会社から出向で上海に総経理として赴任しました。次の3月で定年退職します。退職所得控除を活用するために一括で受け取りを考えています。上海での課税はどのようになるでしょうか。合計勤務年数30年、うち上海での勤務はちょうど2年になる予定です。

A,
前回に引き続き、中国における退職金課税について回答します。

中国側での退職金への課税は、中国での居住区分や滞在年数で変わります。
① 5年超えて中国に滞在する居住者
② 5年以下中国に滞在する居住者
③ 非居住者

2) ②の場合
中国側:
中国国外源泉所得かつ中国国外で支払われる退職金は課税が免除されます。
つまり、退職金が日本国内で支払われるとしたら、中国国内源泉所得分の退職金のみ課税されることになります。中国国内源泉所得・中国国外源泉所得勤務年数で案分することになります。
例えば、本ケースでは、退職金が2000万だとすると、下記のとおりです。
日本側 2000万÷(18/20)=1800万
中国側 2000万÷(2/20)=200万

上海における退職金の課税額は①のケースと同じです。

i) 退職金の額が上海平均年収×3倍の金額より少ない場合
納税する必要はありません。

ii) 退職金の額が上海平均年収×3倍の金額より少ない場合
【[超過分 ÷ 年数 - 基礎控除額(4,800)] × 税率 - 速算控除額】× 年数

日本側:
日本では非居住者となるため、総支給額のうち居住者であった期間に係る勤務期間等に対応する部分が、国内源泉所得として日本で所得税が課税されます。
このときの課税は20%となります。
居住者が受ける退職金は、退職所得控除額を差し引いた残額の2分の1が退職所得となり分離課税(累進税率で5%~40%)されますが、非居住者はこの課税方法が適応されず、国内源泉所得部分について一律20%で源泉徴収されます。

多くのケースにおいて、一律20%の課税では非常に不利になってしまいます。
ただし、その場合は選択課税の適用を受けることができます。
これは、非居住者であっても居住者と同じ課税方法を選択できるというものです。

なお、上記の有利な退職所得課税を受けるためには「退職所得の受給に関する申告書」を本人が記入して会社に提出して保管する必要があります。
会社は税務署長から提出を求められた場合以外は、税務署への提出の必要はありません(退職手当等の支払者が保管することになっています)。

※上記のままでは、中国側との2重課税になっております。①のケースと同じく、租税条約に関する届出書(退職年金・保険年金に対する所得税の免除、9号様式)を所轄税務署に提出することで、日本側での課税を免除され二重課税を防ぐことができますが、この場合は中国で全退職金への課税となります。
通常、中国での課税額のほうが大きいので、これを行うと不利になります。②の場合では行わないほうが無難です。

 

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