駐在員事務所の閉鎖手続き(駐在員事務所から現地法人への切り替え)

こんにちは、中国・上海の田中勇です。

本日は、駐在員事務所の閉鎖手続きについてお話しします。

中国進出の方法として、まず駐在員事務所を設立し、数年後に現地法人への切り替えを行うという方法があります。中国においては、設立主体が同一であっても、駐在員事務所と現地法人は全く別の組織として扱われます。したがって、駐在員事務所閉鎖手続きと現地法人設立は全く別の手続きとして、処理する必要があります。以下、「切り替え手順」と「駐在員事務所閉鎖手続き」をお伝えします。

切り替え手順としては、現地法人を設立した後、駐在員事務所を閉鎖するのが最も一般的です。理由は、駐在員事務所を清算してから現地法人を設立する流れにすると、一定期間活動資金が途絶える結果となり、リスクが大きいからです。実務的には、現地法人に資本金が投入され、資金が利用できる状態になった段階で駐在員事務所を閉鎖する企業が多いです。

駐在員事務所閉鎖手続き手順については、以下の通りです。
1. 清算報告書作成(会計士事務所)
2. 税務登記抹消申請(税務局)※1
3. 税関登記抹消申請(税関)※2
4. 残余金国外送金申請(外貨管理部門)※3
5. 銀行口座抹消(銀行)
6. 工商登記証の抹消申請(工商行政管理部門)
7. 組織代表番号抹消申請(質量監督部門)、統計登記証の正本・副本を返還(統計局)

※1 税務登記抹消が完了すれば、事務所の賃貸借契約の解除が可能
※2 税関で税関登記を抹消し、税関登記抹消通知書を取得します。税関で登記したことがない場合、税関発行の証明を取得します。
※3 基本的に人民元については現地で使い切るか、残った場合は所定の手続きを経て外貨に兌換して、外貨口座の残金とともに国外の親会社に送金することになります

注意点としては、清算手続期間と登記住所の問題があります。
まず、清算手続期間は、3カ月~1年程度です。実務上、清算手続時間は、どの程度かかるか予測が難しいという問題があります。税務抹消手続き等に時間がかかるためです。
次に、登記住所の問題です。基本的に駐在員事務所と現地法人の登記住所を重複して登録することできません。したがって、駐在員事務所の登記場所をそのまま現地法人の登記住所にしたい場合は、少し処理が複雑になります。登記住所の重複を避けるためには以下の方法があります。

方法①
(1)一旦、現地法人の登記住所を仮の住所にする
(2)駐在員事務所の閉鎖が完了した後、正規の土地に変更処理
方法②
(1)駐在員事務所の土地を二分割(例、303号室を303号室Aと303号室Bに分割)
(2)一方の土地(303号室A)を駐在員事務所の登記住所に変更し、他方の土地(303号室B)を現地法人の登記住所にする
(3)駐在員事務所の閉鎖手続きが完了した後、駐在員事務所の登記場所(303号室A)を現地法人に追加し、統合

ただし、最近では、一時的な重複登記も認められるケースもあります。進出する企業の業種や地方の担当官によって処理が異なりますので、都度確認する必要があります。

以上です。

関連記事

ページ上部へ戻る