こんにちは、中国・上海の田中勇です。本日も中国Q&Aについてお話します。
Q,中台租税条約がそろそろ施行されると聞いていますが、その内容を教えてください。また、いつ頃施工されますか。
A,
中台租税条約の主な内容については、下記の通りです。
①二重課税防止
②減免税措置
③中台税務当局の情報交換強化
まず、①については、これまで、中国と台湾両国で課税されていた取引について、課税権に関する定めが明確になったことで、二重課税が防止されるようになります。例えば、現在、台湾企業が中国における一部の倉庫等(PEとはみなされない施設)の利益に対し、中国でも25%の企業所得税(法人税)が課税されております。ところが、租税条約施行後は、中国では課税されず、台湾での法人税(17%)のみが課税されます。
また、これまで台湾企業の社員が暦年で90日を超えて中国に滞在した場合、中国でも給与課税されておりました。ところが、租税条約施行後は、暦年で183日を超えて中国に滞在した場合に、給与課税されることになります。
現在においても、二重課税を避けるために、居住国にて外国税額控除(居住国外で支払った税金額を居住国の税金額から差し引くこと)を適用するケースが多いですが、租税条約が適用されれば、そのような複雑な外国税額控除の適用手続きは不要になります。また、この外国税額控除は、必ずしも居住国外で支払った税金額全額を居住国で控除できるとは限らないため、租税条約の内容は、二重課税の防止に大きく役立っているといえます。
次に、②減免税措置について、租税条約施行後は、税率の軽減等があります。例えば、配当金・利息・ロイヤリティに関する税率が軽減されます。これまで、台湾投資家に対する、中国において課税される源泉徴収税率は、10%でした。一方、中国投資家に対する、台湾において課税される源泉徴収税率は、20%でした(証券会社から取得した利息などは15%)。租税条約施行後は、下記のように変更されます。
・配当金 10% (投資先に対し25%以上の持ち分を持つ法人であれば、5%になります)
・利息 7% (政府部門等の国から認可受けた特定の貸付金に対する利息は、免税)
・ロイヤリティ 7%
最後に、③中台税務当局の情報交換強化について、中台税務当局間の連携を強化することが定められております(12条 情報交換)。一方で、租税条約前に取得した情報交換などは行わないことや、刑事事件についてはその情報は適用しないなどの制限があり、実務上で懸念点となる点もあります。今後は、租税条約施行を踏まえ、適切な対応が必要と考えられます。
施行時期について、2015年8月25日に中台租税条約が締結されましたが、施行日は未だ明らかになっておりません。過去の実績から見ると、締結日から1年以上かかっているケースがほとんどですので(例えば、日中租税条約は約1年半年、中米租税条約は約2年半年。)、もう少し時間がかかると考えられます。
【参照】中台租税条約(大陆与台湾签订的避免双重征税协议)
http://www.chinatax.gov.cn/n810341/n810770/c1794734/part/1794748.pdf
以上です。