ムンバイ進出
ムンバイ進出のメリット
1.進出しやすい風土
ムンバイ進出は、インドの対消費者市場を狙う企業にとっては、最適な拠点となります。
インドの中でも特に多民族文化を象徴しているムンバイは、インド最大の港を有し、歴史的に外交が盛んだった商業都市として繁栄していました。こうした背景から、ムンバイには新しい物や異文化を積極的に取り入れるような風土があります。
また、こうした歴史や湾口のような地理条件から、インド国内だけでなく、インドを中心としたアフリカ等の次世代市場を目指す企業も、多くムンバイに進出しています。国境を越えたビジネスのハブとして、ムンバイの発展が期待されています。
2.整ったビジネス環境と消費市場
ムンバイは中心市街地にボンベイ証券取引所、インド準備銀行、インド造幣局といった金融機関が多いことが特徴です。GDPのうち、国全体の5%・工業製品の25%・海運の40%・資本取引の70%がムンバイで取引されています。
金融機関が多数あることで、多くのインド企業の本社や多国籍企業の主要拠点が進出しています。ビジネス機会が豊富なムンバイには、より大きな事業機会や比較的高い生活水準を求め国内各地から多くの人が集まり、様々な宗教・文化の集積地ともなっています。この結果、ムンバイの消費市場には高所得者層が多くを占めています。
業種別 | ムンバイ | デリー | チェンナイ | ||||
米ドル | 現地通貨 | 米ドル | 現地通貨 | 米ドル | 現地通貨 | ||
製 造 業 |
ワーカー (一般工職) |
306 | 20,350 | 239 | 15,929 | 209 | 13,926 |
エンジニア (中堅技術者) |
524 | 34,875 | 613 | 40,775 | 452 | 30,102 | |
中間管理職 (課長クラス) |
1,429 | 95,068 | 1,621 | 107,885 | 1,055 | 70,215 | |
非 製 造 業 |
スタッフ (一般職) |
519 | 34,538 | 558 | 37,127 | 440 | 29,284 |
マネージャー (課長クラス) |
1,398 | 93,011 | 1,709 | 113,709 | 1,162 | 77,340 | |
店舗スタッフ (アパレル) |
325~1,136 | 21,600~75,600 | 120~195 | 8,000~13,000 | n.a. | n.a. | |
店舗スタッフ (飲食) |
289~996 | 19,200~66,300 | 105~180 | 7,000~12,000 | n.a. | n.a. | |
法定最低賃金(月額) | (1)112 (2)119 (3)127 |
(1)7,435 (2)7,935 (3)8,435 |
(1)138 (2)152 (3)168 |
(1)9,178 (2)10,140 (3)11,154 |
94 | 6,276 | |
賞与支給額 (固定賞与+変動賞与) |
基本給与の1.57カ月分 | 基本給与の1.51カ月分 | 基本給与の1.12カ月分 |
3. 国家プロジェクト「デリー・ムンバイ間産業大動脈(DMIC)構想」
日系企業のインド進出は、完成車メーカーがエンノール港・チェンナイ港などの港湾を使用しているため、東側の港湾が有名です。しかし現地では西側の West Coast に注目が集まっています。その理由は、デリー・ムンバイ間産業大動脈構想(DMIC:Delhi-Mumbai Industrial Corridor)による大規模インフラ整備への期待です。
このプロジェクトは、インドの2大都市、首都デリーと商都ムンバイの間に貨物専用鉄道・工業団地・発電所・道路・商業施設などを整備する、日印共同のインフラ開発プロジェクトです。雇用潜在力を 7 年で 2 倍、工業生産量を 9 年で 3 倍、輸出量を 9 年で 4 倍に拡大することを目標としています。この大規模な計画に世界中の期待が集まっており、ムンバイ進出の魅力はますます大きくなっていきます。
ムンバイ進出の注意点
1.意思疎通の難しさ
進出のメリットでも述べた通り、ムンバイには異文化を積極的に取り入れるような風土があり、国内各地から多くの人が集まります。様々な宗教・文化の集積地となり、多言語国家のインドの中でも、特にムンバイは使用される言語が多い都市となりました。この多言語都市ムンバイでの市場調査は、英語などの主要言語の他、現地での希少言語での対応が必要になります。
2.ビジネスコストの高さ
ムンバイ周辺はビジネスコストが高いことで有名です。人件費も比較的高く、さらに近年では地価も高騰しています。この理由として、外資企業の進出が進み、人材・不動産が超過需要になっていることが考えられます。特にムンバイでは、国内外から整ったビジネス環境を求めて、ヒト・モノ・金が集積しているため、これら固定費の上昇はますます加速していくと考えられます。
3. 複雑・煩雑な制度
現インド進出において最も注意すべきことは、州や地域において言語、文化、生活習慣が異なることです。州の権限が非常に強く、州ごとに規制や税制も異なります。例えば州ごとに管理・運用される制度として、州またぎ税(CST)等があります。税制・法制が複雑で、その分手続きなども煩雑になります。DMICによりインフラが整い、物流がより活発になったとしても、こういった制度によって思うようにビジネスが進まない可能性があります。
ムンバイ進出の注意点は、マハラシュトラ州の優遇政策の恩恵を、一部地域で受けることができないものがあることです。例えばCSTの還付は、ムンバイ周辺のナシック地域では受けることができません。