デリー・グルガオン進出
デリー・グルガオン進出のメリット
1.巨大な消費地域
インドの首都であるデリーは、人口1,675万人(2011年時点)を有し、インドにおいて人口第2位の巨大都市です。政治の中心地であり、デリー首都圏(NCT:National Capital Territory of Delhi)として、州に準ずる行政区分に指定されています。
また、デリーとその周辺のグルガオンやノイダ等を合わせた地域は、デリー首都圏地域(NCR:National Capital Region)に指定されています。インドに進出する日本企業のおよそ半数がこの地域に集まっています。ローカルマーケットだけでなく、日系企業を対象にビジネスを行うことができるので、日系企業のこの地域への進出はますます増加することが期待されています。
2. 新産業方針(NIP:New Industrial Policy)
NCRの一つでもあるグルガオンは、新産業方針(NIP:New Industrial Policy)というものを発表しています。既に、総額8兆7,000億ルピーの投資を見込む20の特別経済区(SEZ)に関する法案が成立し、10の特別経済区が中央政府の承認を得ています。インドのSEZでは、輸出企業向け・IT向けのSEZや地域ごとの優遇措置が用意されており、特に貧困率の高い北部では、雇用創出や州内総生産(GSDP)の成長を目的として手厚い優遇措置が用意されています。
このようにデリーを取り巻く一帯は、インド最大の工業都市圏が形成されており、中でもグルガオンやノイダといった郊外では、自動車や電機など外資系有力企業が多数進出しています。対インド直接投資の1/4がこのデリー首都圏に対して行われており、日系企業だけでなく、世界中の企業が進出しています。
3. 国家プロジェクト「デリー・ムンバイ間産業大動脈(DMIC)構想」
日系企業のインド進出は、完成車メーカーがエンノール港・チェンナイ港などの港湾を使用しているため、東側の港湾が有名です。しかし現地では西側の West Coast に注目が集まっています。その理由は、デリー・ムンバイ間産業大動脈構想(DMIC:Delhi-Mumbai Industrial Corridor)による大規模インフラ整備への期待です。
このプロジェクトは、インドの2大都市、首都デリーと商都ムンバイの間に貨物専用鉄道・工業団地・発電所・道路・商業施設などを整備する、日印共同のインフラ開発プロジェクトです。雇用潜在力を 7 年で 2 倍、工業生産量を 9 年で 3 倍、輸出量を 9 年で 4 倍に拡大することを目標としています。この大規模な計画に世界中の期待が集まっており、デリー・グルガオン進出の魅力はますます大きくなっていきます。
デリー・グルガオン進出の注意点
1.コスト上昇によるメリットの逓減
インドでは、外資企業の進出が進むにつれて地価が上昇しています。特にニューデリーは地価が高騰しており、常に新しいオフィスビルや住宅を建設をしていても、慢性的なスペース不足の状態です。このため、家賃が非常に高騰し、契約更新時に2倍の家賃を要求されるケースもあると言われています。
SEZや工業地帯も増設が決定されてはいますが、需要に対して供給が追い付かず、入札価格も上昇しています。投機目的で買われている土地も多く、空用地がないため、進出が思うように進まないのが現状です。多大な労力をかけて進出しても、メリットを享受できなくなる可能性があります。
2.複雑な規制・税制
インド進出の注意点としてよく挙げられるのが、Budgetと外資規制です。Budgetとは、政府が毎年2月に発表する予算案のことで、主な内容は税制改正等になります。これにより、インドの税制はほぼ必ず毎年変更されるので、適応するのに現地企業でも混乱が起こります。特定のエリアへの進出・投資に対して減価償却の面で優遇策を講じるといった投資を促す政策も含まれるので、今まで得られていたメリットが突然消失するということも起こりえます。
外資規制については、例えば外国資本の出資比率は業種別に規制されています。また業種によっては進出前に、政府機関より事前承認を得る必要があります。承認の可否は、FIPB(外国投資促進委員会 Foreign Investment Promotion Board)が判断しますが、そもそも外資規制のための制度ですので、その審査・承認取得までには相当程度のコストと時間を要することとなります。
3. 優遇政策の曖昧さ
インドには、進出企業に対する優遇政策が、他の成長国に比べて充実しておりません。前述の通り、毎年税制改正等が行われますが、その改正が末端の役所まで追い付かないという事態が頻発しています。このため、苦労して新制度に適応したとしても、役所の手続きが追い付いていないため不備・遅延につながり、思うようにビジネスが進まない可能性があります。またSEZという制度は作られましたが、ルールや手続きの不備によって開発が遅延してているSEZも見受けられます。進出をする際は、対象地域の法令や慣習など、多くのことを事前に調べる必要があります。