アーメダバード進出
アーメダバード進出のメリット
1.さらなる発展が期待される「奇跡の都市」
アーメダバードは"グジャラートの奇跡"と言われる経済発展を経験した都市です。01年当時、後の首相となるモディ氏が州首相に就任し、電力供給能力を10年で3倍に強化・煩雑な税制・規制の簡素化等の改革により、外資企業の進出を促しました。徹底したビジネス路線で企業進出を呼び込み、グジャラート州はその10年間を2ケタ成長し続けました。
この結果、グジャラート州はインド唯一の「売電州」となりました。さらに水、工業用地等の良好なインフラを基盤として、石油化学をはじめ自動車、金属加工、機械、セメント、バイオ等各種産業が発達し、世界各国から企業が進出しています。
2.戦略的立地条件とデリー・ムンバイ間産業大動脈構想(DMIC)
アーメダバードは、インド西部のグジャラート州の中で最大の都市です。首都デリーと商都ムンバイの中間に位置し、進出地域としては戦略的に大変魅力的な立地です。また貨物取扱量国内第2位のムンドラ港などの港湾を有し、インド国内の流通のハブとして繁栄しています。
現在インドでは、デリー・ムンバイ間産業大動脈構想(Deli-Mumbai Industrial Corridor : DMIC)という、国土面積の16%の地域を対象にした開発プロジェクトが進められています。デリー・ムンバイ間に貨物専用鉄道・工業団地・発電所・道路・商業施設などのインフラを整備する計画で、このプロジェクトのために4,500億円もの借款契約を日印両政府で結びました。
3.経済政策と日本優遇の制度
インドには、SEZ(特別経済区)や工業団地が多くありますが、アーメダバードのあるグジャラート州も例外ではありません。マンダル工業地帯やサナンド工業団地、ムンドラSEZやタヘジSEZなど多くの土地に、スズキ・日立・ロート製薬といった日系企業が進出しています。
SEZや工業団地では、以下のような優遇措置を受けることができます。
- 製造・販売活動開始から最初の5年間は100%免税、それ以降5年間は50%免税。収益を再投資することを条件に、さらに5年間の50%免税される。
- 関税、物品税、サービス税、VATなど各種税金免除という優遇処理あり
- ロケーションメリットあり(インターナショナル・ドメスティック空港およぶ海港あり)
- スピーディな通関処理(24時間の輸出および輸入通関あり)
さらにマンダル工業団地のうち、約120万㎢が「日系企業専用の土地」として用意されています。
アーメダバード進出の注意点
1. 脆弱なインフラ
DMICに代表されるように、インドではインフラの整備に力を入れていますが、需要に対して供給がまるで追い付いていないのが現状です。アーメダバード周辺も、上記の通りかなりよく整備されてきましたが、未整備なところの方が多いようです。インドの都市部では渋滞がある種の名物になっていますが、こうした面からも需給のギャップがうかがえます。ちなみに、インド全体での交通渋滞による経済損失は、60億円にも上るという試算もあります。
また、増設の続く工業団地ですが、こちらも超過需要のため、価格が高騰しています。投機目的で買われている土地も多く、空用地がないため、進出が思うように進まないのが現状です。
2. 複雑な規制・税制
インド進出の注意点としてよく挙げられるのが、Budgetと外資規制です。Budgetとは、政府が毎年2月に発表する予算案のことで、主な内容は税制改正等になります。これにより、インドの税制はほぼ必ず毎年変更されるので、適応するのに現地企業でも混乱が起こります。特定のエリアへの進出・投資に対して減価償却の面で優遇策を講じるといった投資を促す政策も含まれるので、今まで得られていたメリットが突然消失するということも起こりえます。
外資規制については、例えば外国資本の出資比率は業種別に規制されています。また業種によっては進出前に、政府機関より事前承認を得る必要があります。承認の可否は、FIPB(外国投資促進委員会 Foreign Investment Promotion Board)が判断しますが、そもそも外資規制のための制度ですので、その審査・承認取得までには相当程度のコストと時間を要することとなります。
3. 煩雑な事務手続きと慣習
インド進出で最も注意しなければならないのは、事務手続きと慣習だと言えます。インド政治の特徴として、地方政治・経済運営には、州政府が大きな影響力を持ちます。これが時に地域住民や既存の地場産業界の意向を優先し、国外企業の進出の妨げとなるケースも見られます。
またインド進出は、事業を開始するに当たり必要な関係各機関・当局の許認可取得は、タイ等と異なりワン・ストップ化されておらず、手続が煩雑だと言われています。特にアーメダバード進出は、SEZや工業団地が魅力的ですが、ここの手続きで想定以上の時間を奪われることがあります。