TCGのノウハウツールWiki Investmentの中から、シンガポールビジネスのポイントを公開します。
コロナの影響で企業活動が縮小する中、外国人が行っていた仕事を内国人(シンガポール国籍/永住権保持者)に分け与える方針で政治的コントロールを行ってきたシンガポールでは、2020年9月から極端に就労許可手続きが難化しています。
コロナ感染拡大防止措置も合わさって、複雑な手続きになりがちな就労許可、特にEP(Employment Pass)取得手続きについて、今回はまとめてお伝えします。
手続き概要
まず、就労許可取得のためには、元々就労するべき外国人に相応の学歴、経験、専門性と職位が与えられなければならないルールでした。
更に、その外国人招聘の理由の正当化のため、国内で同様の人材が確保できないことの証明として、一定期間の求人広告掲載が義務付けられていました。
2020年9月以降は、最低給与額が引き上げられ、更に10月からは上記求人広告掲載の期間が4週間以上と定められました。
これにより、例えば日本本社からシンガポールで勤務することが望まれる人材につき、現在は以下のような手続きを踏む流れとなっています:
1.採用対象者の属性確定(年齢、学歴、専門性、職務経験、職位)
2.採用対象者の給与額確定(Self-Assessment Toolを実行)
3.採用広告の作成、掲載(my Careers Future上での掲載、4週間)
4.採用面接の実施(上記3.の期間中、できれば毎週実施)
5.就労許可申請(myMOM Portalのサイトで実施)
6.仮承認(IPA)の取得(通常申請後2週間~3週間で結果通知)
7.IPAへの署名(スキャン対応可、原本は持参する)
8.当該外国人のシンガポール入国(コロナ対策に対応、隔離滞在2週間)
9.就労許可発行手続き(myMOM Portalで実行)
10.指紋・顔写真登録(事前にアポイント取得が必要)
11.カード受け取り(上記10.の登録手続きから概ね1週間後)
なお、上記3.と4.の広告活動は、従業員数が10人以上の会社のみが対象とされ、9人以下の会社では必ずしも実行する必要はありませんが、時間があれば実行すると、より手続きがスムーズになると考えられます。
以下、詳述します。
1.採用対象者の属性確定(年齢、学歴、専門性、職務経験、職位)
シンガポールでは、伝統的に優秀な外国人人材を自国で囲い込む方針を持っていました。
基準としては、一定の年齢になればそれに相応しい職務経験、専門性、給与を得て、相応しい職位に着いている必要がある、と考えられています。
最も問題となるのは下記に見る給与金額ですが、一般に公募をすることを念頭に、どのような専門性の求められる仕事であるか、その属性を確定する作業が必要になります。
2.採用対象者の給与額確定(Self-Assessment Toolを実行)
次に、対象者の給与額を合格水準以上に設定します。
こちらは、以下の政府公式サイト内にあるオンラインサービス、Self-Assessment Toolを用いて足切りラインを調べることができます:
https://www.mom.gov.sg/eservices/services/employment-s-pass-self-assessment-tool
月額固定金額として会社が負担するものであればよいため、母国側支給分や各種固定手当の金額、場合によっては家賃負担分を本人に手当として支給することにして、調整を図ります。
こちらの金額は、年額にして個人所得税の納付金額と直接的に関わる数字となるため、不確実な金額は許されず、変動制の賞与や、滞在期間中の享受分が変動することのある会社負担の家賃等については、
固定の月額給与額(Gross Monthly Salary)に組み入れられないことに注意が必要です。
3.採用広告の作成、掲載(my Careers Future上での掲載、4週間)
続いて、確定した内容に基づいて、採用広告を作成、掲載します。
基本的には、以下のサイト、myCareers futureに、Job Descriptionを作成して掲載し、そこから4週間掲載を行うことになります:
https://employer.mycareersfuture.gov.sg/
この際、雇用を希望するポジションについて、正確に情報を記載するのはもちろんのこと、シンガポールにおいて忌避される差別的条件や、極端に難しい要件は、記載しない方がいいでしょう。
4.採用面接の実施(上記3.の期間中、できれば毎週実施)
公募を行っていると、例え条件に当てはまっていなくとも、数多くの人が履歴書を投稿してきます。
個人の概要や履歴書を見ながら、Application Statusを操作していき、全く当てはまらない場合は「Unsuccessful」、面接の価値があると思われる応募者には「To Interview」とする要領で、ショートリストしていきます。
基本的には不満を訴える人がいる場合ですが、あまりにも長い間操作をせずにいると、担当当局のWorkforce Singaporeから電話が来て、早く会社の判断を反映するよう迫られます。
従って、目安としては、毎週候補者を確認し、ショートリストするだけでなく、実際にメールで日程を確保して面接を実行することが理想的です。
期間が4週間あるため、その人数は平均毎週2人程度でも構いませんが、面接する場合には、具体的に会社が必要としている人物像を話し、人種や言語で差別したと言われない程度に高い要求を突き付けて、よりよい応募者がいたらそちらを採るのでそのつもりでいてほしい、と伝えるのがよいと考えられます。
5.就労許可申請(myMOM Portalのサイトで実施)
上記4.の採用面接が行われ、3.の広告期間が終了したら、その広告時に割り振られたmyCareers Future上のIDで就労許可の申請をすることができるようになります。
広告については、シンガポール人、永住権保持者、その他外国人の別に、それぞれ何人と面接し、何人断ったか、どのような理由で断ったかも、記載することになります。
申請完了前にパスポート、および学歴証明書のスキャン画像を提出し、申請料S$105を支払うことになる点、注意が必要です。
6.仮承認(IPA)の取得(通常申請後2週間~3週間で結果通知)
申請の後、3週間以内に結果が通知されます。
あらかじめ雇用者側の情報として入力しておいたメールアドレスに通知が来るもので、問題がなければ仮承認(In-Principle Approval:IPA)が発行されます。
一方、当局MOMが判断して、内国人でも人材の確保が可能だと理解された職位については、追加書類を要求されたり、一旦却下という形でRejection(不許可)が下されることがあります。
その場合、MOMの指示または理由に沿って必要書類を準備し、追加書類の提出、または不許可への対抗意見を述べることができます。
一旦追加書類の要求や不許可判定が出ると、それに対するアクションに対しても最大で3週間の待機期間が生じるため、注意が必要です。
7.IPAへの署名(スキャン対応可、原本は持参する)
上記IPAには、Declaration Form(宣誓書)が添付されており、対象の外国人人材、会社代表者のそれぞれに署名のページが割り当てられています。
会社代表者については、会社印を押印することが必要になる点、注意が必要です。
まずはスキャン画像を用意して下記の9.就労許可発行手続きに備え、その後、原本をそろえて下記の10.指紋・顔写真登録へ向かうことになります。
8.当該外国人のシンガポール入国(コロナ対策に対応、隔離滞在2週間)
入国は、現在以下のプロセスを経て行われます:
・入国許可申請
・PCR検査予約(シンガポール到着時用)
・出発前PCR検査
・オンライン入国カード記入
・フライトPCR(検査シンガポール到着時)
・ホテル隔離
・PCR検査(ホテル隔離滞在終了前)
会社の側で手続きが可能な申請内容ばかりでなく、外国人人材本人が行わなければならないPCR検査や入国カード記入などが含まれる点、注意が必要です。
また、外国人人材は就労許可入手前であってもシンガポールのSIMカードをもって手続きする必要があり、こちらを調達することも、会社側の責任になります。
9.就労許可発行手続き(myMOM Portalで実行)
外国人人材が入国したら、その入国カードの情報でもって、就労許可発行手続きを行うことができます。
手続きにはS$255.00の支払いが求められ、そののちに発行されるNotification Letter(カード発行通知)によって、就労が許可されるようになります。
ただし、このNotification Letterは有効期限2週間の限定的なものであり、この期間中に下記の10.指紋・顔写真登録を実行する必要がある点に注意が必要です。
特に、現在はまだ上記8.の隔離滞在2週間が継続しているため、こちらの期間を待たずに発行手続きをしてしまうと、指紋・顔写真登録まで時間がなくなってしまうため、ある程度待ってから手続きすることに留意しましょう。
10.指紋・顔写真登録(事前にアポイント取得が必要)
上記9.の工程を終えると、下記のサイトにFIN番号などを入力してアポイントを取得することが可能になります:
https://service2.mom.gov.sg/appointment/Default.aspx?action=Make
基本的には書類の提出、指紋・顔写真の登録だけで、早ければ5分もかからず終わる手続きですが、この書類に不備があると、後日再び出向くように言われるため注意が必要です。
具体的には、IPA、Declaration Letter、Notification Letter、Appointment Letterのすべてをプリントアウトし、Declaration Letterについては各人の署名、押印した原本を所持することが求められます。
11.カード受け取り(上記10.の登録手続きから概ね1週間後)
上記9.の発行手続きの時点で登録した配達住所に、指定した受取り手宛てに配達が行われます。
前日または前々日に通知があり、上記10.の登録手続きから4~5営業日後の日付で、多くは14:00から18:00に配達される、と記載されています。
しかし、ところにより配達の時間はバラバラで、早いときは午前中になり、電話がかかってくることも多いので注意が必要です。
帯同家族居住許可書:DPについて
就労許可としてEP、またはS-Passを所持している外国人人材は、その月額所得がS$6,000を下回らないことを条件として、配偶者および子女をシンガポールに帯同することが許可されます。
この帯同家族に発行されるのがDP(Dependant Pass)で、現在EP Onlineのサイトで申請が可能です。
(ゆくゆくは他のすべての手続きと合わせてmyMOM Portalのサイトに移行予定)
配偶者の場合は以下の手続きとなります:
1.必要書類(パスポートの画像データ、戸籍謄本原本、領事証明申請書原本、委任状原本)の回収
2.在星日本大使館における婚姻証明書の発行(予約~申請~受取で約2週間)
3.DP申請(EP Onlineにて実行)
4.IPA発行(通常、上記3.DP申請から1日~7日)
5.配偶者の入国~隔離滞在
6.DP発行手続き
7.指紋・顔写真登録(事前にアポイント取得が必要)
8.カード受け取り(上記7.の登録手続きから概ね1週間後)
4.のIPA発行以降は概ね就労許可申請手続きと同じであるため、上記1.~3.の注意点に絞って詳述します。
・必要書類のうち、パスポートの画像についてはメールなどでデータを受領すれば事足りますが、戸籍謄本原本、領事証明申請書原本、委任状原本については原本を回収する必要があります。
・事前に就労許可保持者の外国人人材本人に、以下のリンク先からダウンロードできるフォーム(1. 証明書発給申請書、および5. 委任状の2点)に記入を依頼し、書類を回収しておくことが効率的です:
https://www.sg.emb-japan.go.jp/itpr_ja/ryoji_shoumei_shussei.html
・在星日本大使館における婚姻証明書の発行手続きは、上記リンク先の日本領事館ページにある通りですが、受け取りの際、手数料がS$15.00、現金で必要です。
・DP申請に際しては、配偶者の最終学歴とシンガポールにおける就学の意志の有無、現在の収入の多寡などを記入することになるため、正確に把握しておく必要があります。
子女の場合は以下の手続きとなります(20歳以下のみ):
1.必要書類(パスポートの画像データ、戸籍謄本原本、領事証明申請書原本、委任状原本)の回収
2.在星日本大使館における出産証明書の発行(予約~申請~受取で約2週間)
3.母国の医療機関におけるワクチン証明書、専用フォームの回収(12歳以下の子供のみ)
4.シンガポール当局HPBにおけるワクチン証明書申請、取得(約3週間)
https://www.nir.hpb.gov.sg/fcine/#/
5.DP申請(EP Onlineにて実行)
6.IPA発行(通常、上記3.DP申請から1日~7日)
7.子女の入国~隔離滞在(2週間)
8.DP発行手続き
9.指紋・顔写真登録(事前にアポイント取得が必要)
10.カード受け取り(上記7.の登録手続きから概ね1週間後)
1.~2.および5.~10.の手続きは概ね上記配偶者向けDP申請手続きと同じであるため、上記3.~4.の注意点に絞って詳述します。
・専用フォームは以下のサイト中、「Download Immunisation Registration Form」というボタンをクリックしてダウンロードします:
https://www.nir.hpb.gov.sg/fcine/#/
・上記、同じリンク先から登録/ログインを行い、対象子女のワクチン接種状況を入力する画面に入ります。対象子女が接種済みのワクチンについて、一つ一つ記入していきます。
以上、シンガポール就労許可申請について伝えします。
※実際の状況は、上記内容と異なる場合もあります。こちらの記載内容に関わらず、メールなどメッセージの内容、担当官の指示をよく理解し、正確に従うよう努めてください。
出入国、および就労許可などに関して、もっと詳しく聞きたいという方、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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【問い合わせ先】
東京コンサルティングファーム
シンガポール法人
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