これから株価が上昇することが期待される企業にとって、給与の代わりに株式購入の権利を付与するストックオプションは、シンガポールでもよく用いられます。
特にベンチャー企業では、資金調達の一手段にもなり、従業員に会社の業績と連動した対価を支払うことにもなるため、有効な賞与といえるでしょう。
そのストックオプションの課税方法は、しかし国によって様々です。
今回は、シンガポールにおけるストックオプションの課税について、基本から解説していきます。
そもそもストックオプションって、なんだっけ?
簡単に定義するならば、ストックオプション(ESOP:Employee Share Option)とは、自社の株式を従業員が購入できる権利を言います。
一般には、購入する期間と価格が決められた形で権利が付与されるため、当該期間に株価が上昇すれば、従業員は元の安い値段で株を購入することができ、それをまた売りすれば差額分得をします。
基本的には飽くまで購入する権利であって、ただで株式がもらえるわけではない点に注意が必要です。
また、ストックオプションといわれるように、必ずしも購入する義務があるわけではないので、元の値段より株価が下落するような場合には、権利を行使しないこともできます。
株式なのに、シンガポールで課税されるの?
一般に、資本的取引については課税されないシンガポール、株式の購入や売却によるキャピタルゲインは非課税となることが多いです。
しかし、ストックオプションをシンガポールで付与され、権利を行使して値上がりした株式を元値で購入した場合、その得した差額分は、課税対象になります。
しかし、購入後さらに値上がりした株式を売却して得をした分は、キャピタルゲインとみなされ非課税となります。
いつ課税されて、いつ申告するの?
ストックオプション課税がなされるのは、あくまでもシンガポールで付与されたストックオプションについて、シンガポールで購入権を行使した場合です。
そして、その購入権を行使した瞬間が、課税所得が発生した時点となります。
したがって、株式購入権を行使した年の翌年4月中旬までに、個人所得税を申告することになります。
権利を行使する前に帰国したらどうなるの?
ストックオプションの付与がシンガポール駐在中であったとしても、その権利行使が帰国後になることは十分考えられます。
その場合、帰国時のタックスクリアランスで権利行使があったものとみなして課税されることになります。
タックスクリアランスは原則シンガポール雇用最終日の1か月前までに行うこととされており、この基準で雇用最終日の1か月前の会社の株価が採用され、計算されます。
具体的によくわからない場合は下記を参照!
権利行使や購入の時期も含めて、3つのパターンに分けて考えてみましょう。
1.ストックオプション付与、権利行使ともにシンガポール国内の場合(基本)
この場合、課税所得は権利行使時の株価とストックオプション付与時の株価の差額となります:
課税所得:60-30=30
売却した時や、雇用終了≒帰国する時の価格は関係ありません。
2.ストックオプション付与が日本など国外で、権利行使がシンガポール国内の場合
この場合、株の購入権自体がシンガポールでの労働の対価ではないと考えられるため、どの法人の株式を購入する権利であったとしても、一元的に非課税となります。
3.ストックオプション付与がシンガポール国内で、権利行使が帰国後の場合
この場合、権利行使や売却による利益は度外視して、雇用終了一月前の株価が権利行使時の株価とみなして課税所得が計算されます:
課税所得:40-30=10
駐在員に関しては個人所得税を会社負担とする企業も多いですが、ストックオプションにも報酬とみられる部分には課税がされるのだということを理解したうえで、有効に活用していきたいものです。
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