皆さん、こんにちは。シンガポール駐在員の岩城です。今回は再雇用契約の締結について、実務上の留意点を確認していきます。
多くの企業において、再雇用を締結する際には、これまでの給与を見直したいと考えているかと思います。給与の調整はRetirement Re-Employment Act(RRA)においても認められていますが、再雇用契約における職務や責任によるものでなければなりません。
これまでの職務の一部を他のスタッフに移管することや、役職を外すことでその分の手当を調整することが可能と考えられます。ただし、当然会社と従業員との間で十分に話し合いを行い、再雇用となる従業員にとっても会社にとっても納得いくことが望ましいものとなります。
<再雇用契約の実務(交渉の流れ)>
再雇用契約を締結する際の指針は以下の通りとなります。
1. 再雇用を締結するのに該当する従業員が適格かどうかを決定する
※適格でないと判断した場合には、早急にその旨を従業員に伝える。
2. 定年を迎える従業員が62歳になる6カ月前程度から話し合いを始める
3. 再雇用の条件が公正で妥当なものであるか確かめる
4. 62歳になる遅くとも3カ月前に再雇用契約書を従業員に提示する
会社はなるべく早めに再雇用契約の準備をする必要があると同時に、従業員にも定年後も働く意思がある場合には、会社に早めに通達するように周知させておくことが望ましいと考えられます。これは、就業規則などにおいて規定する方法などが考えられます。
<雇用支援金(Employment Assistance Payment(EAP))>
従業員が再雇用を希望し、会社が十分な検討の結果再雇用することができないと判断した場合には、雇用支援金を従業員に支払うことが推奨されています。
※十分な検討とは、就労期間中に行った業務、所属した部署に関わらず会社内において再雇用する可能性はないかまで検討することとなります。
雇用支援金については、月額基本給の3カ月分程度とされ、S$4,500-S$10,000程度が目安とされています。
また、一度再雇用され、再雇用の更新がされない等の場合においては、月額基本給の2か月分程度の雇用支援金を支払うことが目安とされています。この再雇用の期間は最低18カ月とされています。
上述の通り、雇用支援金の支払いは義務ではなく推奨されるものとなっています。ただし、従業員においては、再雇用されず、雇用支援金の金額が公正なものでないと判断した場合、COL(Commissioner of Labour)に不服申し立てをすることができます。つまり、雇用支援金は会社の義務ではなくとも、労使の間で納得できる額を支払う必要があると考えるべきものとなります。
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Tokyo Consulting Firm Co. Pte. Ltd.,
岩城 徳朗(iwaki noriaki)
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