シンガポールの労働組合、NTUCがしていることとは!?

投資環境・経済

少しずつ従業員寄りになってきているとはいえ、まだまだ企業に優しいシンガポール、他国で聞かれるような労働組合の活動はほとんど目につきません。

しかし、シンガポールにも労働組合は存在し、その代表大会としてNTUCを開きながら、今日に至るまで活動しています。

今回は、シンガポールの労働組合がどのような活動をしているか、NTUCがどのように運営されているか、ご紹介します。

NTUCって?

NTUC(National Trade Union Congress)は、シンガポール全国労働組合会議と訳されますが、シンガポールで働く様々な人種、年齢、国籍の労働者に対して、包括的で安定した雇用環境を整えることを目的に活動する委員会により、4年に1度開催されています。

その歴史は長く、シンガポール独立以前の1961年に結成されました。

シンガポール労働大学やライフスタイルセンターの設立(1990年)を手掛け、シンガポールの政府の方針に沿った、高い生産性を生み出す労働力の確保、国内における豊かで安定した生活の創出に尽力してきています。

加盟組織はシンガポール国内の労働組合が約90、約23万人の組合員が登録されています。

枝葉の組織がすごいって本当?

NTUCが音頭を取って始めた事業としては、40歳以上を対象にした中高年職業訓練(Career Activation Programme)や労働者の需給バランスを整える職業安定所(Job Security Council)などがイメージされますが、それ以外にも生活に関わる様々なプログラムが実施されています。

例えば、女性が実行することの多い家事を男性にも手伝わせることを目的に訓練する共同家事プログラム(Shared Parenting Programme)や、職業ごとの業界事情やキャリアの可能性を伝えるコーチングプログラム(Career Coaching)が定期的に行われています。

また利用できるのは会員だけですが、NTUC会員であれば無料で受信できるクリニックや法律相談所(Lawworks Legal Clinics And Legal Primers)も存在します。

また、1970年代に始まった組合生協事業は、FairPriceというスーパーとして定着し、現在ではシンガポール最大の小売り業者となっています。

労働組合って活動しているの?

新聞を見ていても、あまり春闘のようなイベントが報告されることの少ないシンガポールですが、労働組合は確固として存在しており、上述の通り、NTUCにも約90組合が所属しています。

組合は、こうした業界で働く従業員を組合員として登録、その賃金をモニタリングしながら、あまりに低い賃金上昇率や降給・降格が行われる際には従業員の駆け込み寺として、労働組合が機能するようになっています。

具体的には、電機・電子製品製造・販売業組合、商業組合、銀行・保険業者組合、公務員組合、看護士組合、運輸業者組合、教員組合、海運業者組合、などが主に活動しています。

こうした業界は、原則として雇用者である企業や組織の権力が強く、また国民の生活に直結する重要産業でもある組織が多く存在していることから、労働者を保護し、労働力をモニタリングすることで、労働組合が社会の安定剤となっていると言えます。

最近にわかに発言力が増している?

最近、コロナウイルスの影響から、シンガポールでも多くの企業が従業員の解雇を選択せざるを得ない状況に追い込まれています。

この点、平時には余剰人員の削減を意味する整理解雇(Retrenchment)という言葉を用いて対応を打ち出し、企業側にも一定の理解を示しながら、整理解雇のルールに従わない企業により解雇された従業員を弁護して一定の補償を確保したり、そもそも整理解雇を企業に思いとどめさせたりするようになってきています。

シンガポールでは、半年以内に5名以上を整理解雇する際にはMOMに連絡することが基本的な義務になっていますが、労働組合に加盟している場合には、まず組合に相談をすることになります。

徐々に失業率が上昇する中、労働組合が整理解雇に対して待ったをかける動きが、毎日のように報道されるようになっています。

関連する業界では、これまでやり取りがなかったとしても、業界の常識、慣例を学べるよう、興味をもってみるのも大切になるかもしれません。

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