日本では県ごとに、時間単価で設定される最低賃金、外国ではその決め方も異なる場合がほとんどです。
シンガポールについて見ていく前に、まずはASEANにおける法定金額を低いところから順に見てみましょう(2018年末現在):
1.ミャンマー: MMK4,800/日(≒USD100/月)
2.ラオス: LAK1,100,000/月(≒USD130/月)
3.カンボジア: 原則なし(縫製業のみUSD170/月)
4.ベトナム: VND2,760,000-3,980,000/月(≒USD120-180/月)※地域で異なる
5.インドネシア: IDR1,454,154-3,648,035/月(≒USD105-260/月)※地域で異なる
6.マレーシア: MYR920-MYR1,000/月(≒USD230-250/月)※地域で異なる
7.フィリピン: PHP256-512/日(USD145-290/月)※地域で異なる
8.タイ: THB308-330/日(≒USD280-300/月)※地域で異なる
9.ブルネイ: 原則なし
10.シンガポール: 原則なし
一般にはシンガポールには最低賃金もないことで知られていますが、以下見るように、実は例外もあります。
シンガポールで最低賃金のある職業
労働生産性を高めるという目的を掲げ、シンガポールでは以下3つの部門で最低賃金が底上げされる取り組みを打ち出しています:
・保安部門
・清掃部門
・景観維持部門
いずれもシンガポール国籍/永住権保持者が対象であり、民間企業ではあるものの、国の安全・衛生・景観に関わるため、半公務員的な扱いをしてコントロールすることを目的としています。
保安職員の場合、職位や経験年数により、S$1,175~S$2,169の最低賃金が定められています。
清掃職員の場合、清掃場所の公共性・重要性と職位により、S$1,200~S$1,900と最低賃金が定められます。
景観維持職員は、職位と経験年数でS$1,300~S$2,450と最低賃金が定められるほか、2023年からは昇給率3%を維持するよう求められます。
いずれも、トレーニングなどを経て職務を遂行することが求められ、シンガポールが国を挙げての取り組みとしていることが見て取れます。
外国人比率カウントのための賃金
S-PassやWork Permitといった就労ビザを申請・発行するためには、通常一定程度内国人・外国人の比率を確保する必要があります。
これは、シンガポール国籍/永住権保持者を一定数雇用しなければ、外国人を雇用できないことを示していますが、これにも条件があります。
具体的には、シンガポールが柔軟な雇用条件を許容しており、短時間での勤務でも雇用とみなしている点、ともすればごくわずかな時間だけ働かせ、その対価を支払うことで内国人の頭数を増やそうという取り組みを防止する目的で、シンガポール国籍/永住権保持者の賃金に一定の条件が課せられています。
これをLocal Qualifying Salary(LQS:内国人算定給与)といい、2019年7月1日からの基準は、最低賃金としてS$1,300以上で1人、S$650以上で0.5人と数えるというものです。
以前はそれぞれS$1,200以上で1人、S$600以上で0.5人としていたものであり、新たな基準に符合していなければ、今後の申請には影響が及ぶことになります。
諸国が最低賃金を定めるものとはその目的を異にしているものの、シンガポールにもこうした給与の制限があることを、心に留めて給与設定をしていきましょう。
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