企業誘致のため、税法も雇用法も比較的経営者に甘いシンガポールですが、法律で国民が働く権利を保障する動きは、日本よりも強固なものがあるように思われます。
さらに、シンガポールは歴史的に多くの国から様々な人種の人を受け入れてきた歴史から、ほとんど単一民族国家と言える日本に比べ、差別に対する意識が極めて強いといえます。
そんなシンガポールで従業員を採用する際には、日本では当たり前の条件が、雇用のガイドラインに大きく反するとみなされることがあります。
今回は、採用時、特に面接の際にタブーとされる質問や採用条件を取り上げます。
出身・国籍・人種
まず、生まれの質問はタブーです。
多民族国家においては、言語や風習を確認する意味で、どこの民族に属しているのか聞きたくなるものですが、一切許されません。
また、電話面接などで顔が見えないからと言って、肌の色や目の色を聞くのも当然タブーです。
政治・宗教
これがタブーなのは比較的わかりやすいかもしれませんが、休日を日曜に設定することに問題がないか確認するつもりで、うっかり宗教を聞いてしまったりするものです。
実際には、シンガポールで働く以上、その国や会社の休日に合わせることはビジネスルールとして当然と考えられています。
会社の規定を説明するとき、休日について確認すれば十分ですから、宗教を確認することは避けましょう。
また、一般に「重要な公的地位を有する者」と訳される「Politically Exposed Person」でないことを核にすることは問題がないどころか逆に企業の義務とされる部分ですので、これを聞くことで政治的に問題がないかどうかはクリアになると考えられています。
言語
意外と難しいのが言語に関する質問です。
言語能力は仕事上の能力を測るうえでほとんど一番重要なファクターですが、これをタブーとするのはどうしてでしょうか。
実は、外国では一般に英語その他外国語の運用能力が履歴書の必須記載事項とされており、それを実際に確認するためにインタビューがあると考えられています。
ここでいうタブーとは、母語が何であるかという民族的問題に発展する質問を指しています。
多少訛りがあってもコミュニケーションできれば仕事はできるのだから、生まれ育った言語で差別するのはよくない、ということです。
婚姻状況・家族構成
日本でも少しずつ変化は見られますが、これは日本の面接ではほとんど100%聞いてしまう質問です。
しかし、海外では完全にタブー、これは文化的な側面もかかわっています。
日本では、年功序列の生涯雇用が伝統的で、中途採用の人であってもこれからの生活をどのように計画しているのか、確認してミスマッチを避けようという考えがあります。
特に、海外補任させるような場合には、その人に家族があるのか、独り者であるのかによって、手当の支給額も考えなければならないという姿勢です。
しかし、海外では会社はプライベートに立ち入るべきではないとされており、もし将来の計画とそぐわないようであればそもそも応募しないのだから、質問を受けるのはプライバシーの侵害だと考えられます。
性別・年齢
少し新しいのが性別の質問をタブーとする動きです。
これは、LGBTの人々に法律上または生物学上の性別にかかわらず、本人希望するジェンダーで活動させるべきだという近代的な動きにより確立された考え方です。
シンガポールでは履歴書に年齢・性別が書いてないことも、もはや当たり前になっています。
厳密には、年齢によって給与を算定する必要がある場合もあり、性別に比べれば歳を聞くことは許容されていますが、面接当日にならないとどんな人が出てくるのか全く想像もつかないということで、少し困ったタブーでもあります。
嗜好
喫煙、飲酒などの習慣も、タブーです。
日本では会社によって喫煙者を入社させなかったり、飲酒できない人間を営業担当として採用しなかったりということがありますが、シンガポールでそれは完全な差別とみなされます。
以上、少しタブーが多すぎていやになるかもしれませんが、逆にこうしたことに直接触れない質問であれば、会社についてどう思うか、将来についてどう考えるか、自分のキャリアやスキルアップについてなど、仕事に関する質問はいくらでも聞くことができます。
短時間でマッチする人材を見つけ出す面接、不要な摩擦を避け、効率よく最適な人材を発見していきましょう。
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