改正あり!労務解説!~シンガポールの社会保険制度CPF~

労務

 

TCGのノウハウツールWiki Investmentの中から、シンガポールにおける労務のポイントを公開します。

 

日本で給与支給の際、従業員が知らないところで会社がしっかり負担している社会保険料、一般には、厚生年金や健康保険、雇用保険などで構成されることがほとんどですが、海外ではその様子も異なります。

 

今回は、来年拠出率率変わることも発表されている、シンガポールにおける社会保険料CPFについて、その制度をご紹介します。



CPFとは

 

シンガポールの社会保険料として支払いが義務付けられるのが、中央積立基金(Central Provident Fund)、略してCPFと呼ばれる強制積立金です。

 

中央年金庁とも訳される、CPF Boardという公官庁が、税金とは別に、シンガポール内国人(国籍/永住権保持者)の老後の年金に代えて、強制的に積み立てを行わせるものと説明できます。

 

単に積み立てということであれば、自分で自分の貯蓄を行っても同じことですが、CPFは雇用者側、企業側の負担分もあり、ちょうど日本で社会保険料を折半しているのと同じように、両者から拠出されていくことが特徴です。

 

また、引き出しを行うことも、原則として一定の年齢にならなければできない仕組みであるため、実質的にも老後の生活資金として利用されることになります。



日本との違い

 

日本の年金制度は、世代間扶養制度と呼ばれ、年金受給者への年金給付は、その支給時に現役世代と言われる年金保険料納付者によって支えられる仕組みになっています。

一方、シンガポールの CPFは積立制度であり、年金受給者への年金給付は原則として自分が現役時代に納付した保険料から行われることになります。

 

また、支給年齢も日本は65歳からと高めですが、シンガポールでのCPFは55歳から一定部分は引出が可能となります。

 

【日本とシンガポールの年金制度の違い】

項目

日本

シンガポール

年金方式

世代間扶養制度

積立制度(強制)

支給年齢

原則65歳から

原則55歳に達したときから引出可能



引き出し方法と利息、および口座のいろいろ

 

CPFとして積み立てられる金額は以下4つの口座に振り当てられ、それぞれの目的によって引き出しができるように設定されています。

 

1.普通口座Ordinary Account(OA):住宅の購入、住宅ローン、子供の教育費、保険、指定範囲内投資など

2.特別口座Special Account(SA):老後の年金、緊急時の支援など

3.保険口座Medisave Account(MA):医療費、入院費、医療保険保険料支払いなど

4.退職口座Retirement Account(RA):上記OAとSAの金額、55歳時点で年金として引出ができるようまとめられる

 

以上のうち、OAに入っている積立金には2%の、その他は4%の、それぞれ利息が付くことが政府から確約されていましたが、経済状況によってこちらの利息が変更になりつつあります。



対象所得と拠出率

 

対象者は、上述の通り、シンガポール国民、またはシンガポール永住権の保持者です。

就労許可をもって働いているだけであれば、外国人の給与はCPFの対象ではありません。

 

CPFの対象者である上記内国人を従業員として雇用する場合、一人でも採用すれば翌月から企業にCPF申告が義務付けられることになります。

 

CPFの拠出率は、55歳までの場合、額面給与の37%で、雇用者は従業員の給与から20%を控除し、自身も別途17%拠出して、合計額を納付することが必要になります。

 

なお、上記額面給与とした固定の給与額はOrdinary Wageと呼ばれ、CPF拠出額の計算に際しては、最大で月額「SGD6,000×拠出率」という金額の上限が設けられています。

つまり、月額基本給がSGD6,000以上であれば、Ordinary Wageに対するCPFの拠出額は一定になります。

 

一方、ボーナスなど変動のある賞与はAdditional Wageと呼ばれ、別途CPFの対象となりますが、上記Ordinary Wageと合わせ、年間でS$102,000を超えない金額についてのみ、CPFの拠出が求められます。

 

例えば、月額給与がSGD7,000、ボーナスがSGD21,000の従業員の場合、CPF対象のOrdinary Wageは年間でSGD6,000×12か月となり、Additional WageについてはSGD102,000からSGD72,000を引いたSGD30,000までが、CPFの対象所得として扱われます。

この例ではボーナスの金額がSGD30,000を下回るため、SGD21,000の全額がCPFの拠出率で計算され、申告・納付されることになります。



2022年法改正

 

2021年時点で、翌年2022年からCPFの拠出率が部分的に高められることになりました。

 

拠出率の詳細は以下の通りです:

 

【CPF拠出率、2022年1月以前とそれ以降】

年齢

2021年12月まで

2022年1月から

55歳以下

雇用者17%、従業員20%

雇用者17%、従業員20%

55歳超え60歳以下

雇用者13%、従業員13%

雇用者14%、従業員14%

60歳超え65歳以下

雇用者9%、従業員7.5%

雇用者10%、従業員8.5%

65歳超え70歳以下

雇用者7.5%、従業員5%

雇用者8%、従業員6%

70歳超え

雇用者7.5%、従業員5%

雇用者7.5%、従業員5%

※月額基本給がSGD750以下の場合は軽減拠出率が適用される

※※「~歳超え」とは、満~歳の誕生日のある月の翌月からの期間を指す

 

全体としては、やや増額になり、70歳以下も就労人口と数える姿勢が伺えます。



PRとCPFの脱退

 

CPFはシンガポール内国人が対象ですが、就労許可で働く外国人も、長期に滞在していれば永住権の申請が通り、内国人に扱いが変えられる可能性はあります。

 

その場合、CPFの拠出率は1年目、2年目、3年目以降でそれぞれ段階的に引き上げられ、3年目以降でシンガポール国民と同じ拠出率になるように設定されます。

雇用者は、該当する従業員の永住権取得日を把握して、誤りの内容に処理する必要がある点、注意が必要です。

 

詳細な拠出率は、CPF Boardのウェブサイトで確認することができます。

 

なお、一旦永住権を取得して内国人となった他国籍の人間が、永住権を放棄して外国人に戻る際には、積み立てたCPFは原則払い戻しされることになっています。

 

通常、手続きも滞りなく進められますが、CPF Boardからすれば予期せぬ支出となってしまうため、永住権の放棄にはそれ以降シンガポールでは就労許可を取得して働くことも許されなくなるなど、厳しい対応が取られる点、注意が必要です。



以上、シンガポールにおける株式譲渡の手続きについてお伝えしました。

 

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