TCGのノウハウツールWiki Investmentの中から、シンガポールにおける税務のポイントを公開します。
1.前提
シンガポールでは、キャピタルゲインが非課税であることは有名な話です。資本取引にかかる費用は税務上、損金に算入することができません。
資本取引と損益取引の線引きは曖昧で、様々な論説が飛び交っています。
所得を生み出す源泉部分は木に例えて資本取引として扱われ、結果として生み出された損益の部分は果実として損益取引とする考え方が、最も一般的に用いられます。
その他にも、取引の発生頻度から判断する場合など、判例により様々な基準が用いられています。
該当する取引が、資本取引か損益取引が不明瞭な場合、IRASにE-mailにて問い合わせを行い、回答を得ることができます。
2.Capital Allowance制度とは
会計上の減価償却も、原則として税務上は損金不算入となります。
しかし、事業に直接関わる固定資産への投資に係る費用であれば、本来であれば損金に算入されて然るべきである、という政策上の考慮から、Capital Allowanceという税務上の減価償却にあたる制度が設けられています。
また、通常固定資産に評価減が発生した際に「Write off」という表現が用いられますが、IRASは、特定の会計年度に「Capital Allowanceを利用すること」を固定資産の「Write Off」と定義しています。
この点は英文会計に精通している駐在員の方であっても、表現に混乱する可能性があるので注意が必要です。
3. Capital Allowanceの対象となる固定資産
税務上、「Plant and Machinery」と分類される固定資産、および下請け会社や他の団体がPlant and Machineryを用いた場合に掛かる費用、が対象となります。
Plant and Machineryに含まれる固定資産の範囲は、その日本語訳から想像し得るものよりも幅広く、例として、カーペット、家具、印刷機、コンピューター、自動車等が挙げられます。
一方、Plant and Machineryに含まれない固定資産の例としては、日よけ/雨よけカーテン、天気器具、天井版、フロアリングなど、建物の一部に当たる資産がこれに含まれます。
こうした、ビジネスが行われる敷地と不可分のものは、Plant and Machineryには含まれず、RenovationやRefurbishmentとして区分されます。
なお、2020年度の予算案にて、2021年1月1日以降、政府または法定理事会からのCapital Grants(資本助成金)が用いられた部分については、二重のインセンティブ享受を防止する目的により、Capital Allowanceが適用されないことが発表されています。
4.欠損金が発生している場合でも、Capital Allowanceは使える!?
Capital Allowanceは、割賦年度(Year of Assessment)に欠損金が発生している場合等には、次期以降に繰り越すことができます。
繰り越した額は、翌割賦年度以降の課税所得の相殺に用いることができます。
また、欠損金が発生している年度においても、繰り越さずに損金算入し、税務上の費用として認識することも可能です。
5. 償却方法
以下のように、何通りかに定められており、その中から任意で選択することができます。
(100%償却)
コンピューターや、ラップトップ、印刷機などのオートメーション機器や、$5,000以下の低価値資産に関しては、取得年度に取得原価の全額償却することができます。
(2年間加速償却)
2020年、2021年度予算案で、新たなに発表されたのが、2年間の加速償却の規定です。
新しい固定資産への投資の支援と、キャッシュフローの緩和を目的として、割賦年度2021年、もしくは2022年に取得され、3年または規定耐用年数により償却される予定だった資産を、2年間での加速償却法により償却することが可能となりました。
具体的には、初年度に取得原価の75%を、次年度に25%を、それぞれ償却します。
(3年間償却)
この償却方法は、Capital Allowanceの対象となる全ての資産に用いることができます。
現金で購入した資産であれば、取得原価を3年間均等割りにして、全額償却することが可能です。
一方、分割払いで購入した資産であれば、元本とデポジットの和の金額の3分の1が、償却の限度額となります。
(所得税法で規定されたスケジュールに基づいて、耐用年数で償却)
耐用年数が、12年以下であるか、もしくは16年であるかにより、所得税法にて異なる償却スケジュールが提示されており、該当するスケジュールに従った方法で償却を行います。
また、Capital Allowanceの中でも、毎年認められるAnnual Allowanceに加え、固定資産購入初年度にのみ認められるInitial allowanceが存在します。
現金で購入した場合、Initial allowanceの額は、取得原価の20%、Annual Allowanceは取得原価の80%を耐用年数で割った額となり、分割払いによる購入の場合、Initial allowanceは元本とデポジットの和の20%、Annual Allowanceは、取得原価の80%を耐用年数で割った額となります。
ただし、支払いがなされてない割賦年度については、Initial allowanceの支払いがないことに注意が必要です。
詳しい額が知りたい場合は、IRASのHPよりダウンロード可能な計算機を用いて、計算をすることができます。
以上、今回はCapital Allowanceについてお伝えしました。
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株式会社東京コンサルティングファーム シンガポール法人
田中勇
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