日本企業の海外進出、最初の子会社設立としては、そのインフラやビジネス環境から、まだまだ選ばれることの多いシンガポールですが、基本的な会社法のルールは、なかなか聞き方もわからず、教えてもらいにくいものです。
今回は、そんな会社設立時のチェック事項として、会計年度末を中心にシンガポールの法律をご紹介します。
子会社=連結決算
シンガポールは会計制度を国際的なものに整え、その内容はほとんどIFRSと同一と考えることができます。
英国コモンローの伝統を受け継ぎ、法人の監査は一定の要件を満たさなければ原則免除されず、すべての会社が対象となって、その結果としての財務諸表を提出する必要があります。
この要件の一つに、親会社と合算した連結決算で見た売上や総資産の金額があります。
外国法人の支店でなければ会計登記局ACRAへの提出を求められるのはシンガポール法人の財務諸表だけですが、親会社の国で連結決算書が作成されているという条件付きであることに注意が必要です。
会計年度末は親会社とのずれを3か月以内に
ある程度国際的なルールでもありますが、シンガポール法人を子会社に持つ日本企業は、その連結決算において、3か月以内の決算年度末のずれを無視して財務諸表を作成することができます(支店の場合は同一であることが必要です)。
これにより、例えば3月末の決算の企業の場合、そのシンガポール子会社の会計年度末は、12月、1月、2月、3月、4月、5月、6月、という選択肢があることになります。
なお、会計年度末は必ずしも月末でなくてはならないというルールは存在せず、例えば2月15日というような日でも可能です。
しかし、日本では決算書の作成が比較的早く、3月末の決算でも6月までには財務諸表としてまとめられるのに対し、シンガポールの監査は時間がかかることが非常に多く、会計年度末から5~6か月たっぷり使って監査報告書を仕上げる監査法人がほとんどです。
したがって、親会社の連結決算に支障にならない期間でシンガポール子会社の会計年度末を設定するなら、親会社のものより2~3か月早いところで設定することが推奨されます。
なお、3か月を超えて会計年度末がずれる場合については、別途同一会計年度またはずれが3か月以内の会計年度末で編纂した財務報告書を別途提出する必要があり、監査を2回行うことが義務付けられる恐れもあるため、あまり現実的ではありません。
会計年度末はいつ、どう決まる?
シンガポールにおいても会社法は年々改正されており、昨年2018年の改正ではこの会計年度末についても変更がありました。
これは、新規法人については原則として会計年度末を設立のあった月の月末と設定するというもので、変更の必要がある場合は別途取締役決議を提出して、会社設立の日から18か月以内で設定した会計年度末を当局に報告する必要があるというものです。
会計年度末は自由に変えられる?
シンガポールの会社における会計年度末は、以下の条件を満たしていれば、原則として自由に変更することが許されます:
1.現在または直近の過去年度に限る(過去年度の年次株主総会(AGM)が未開催の場合に限る)
2.変更後の会計年度の期間が18か月を超えない
3.過去5年以内に会計年度末を変更していない
したがって、現在の会計年度末に不都合を感じている場合には、変更後の期間が18か月以内になるのであれば、1度は会計年度末を変更できる、ということです。
なお、上記の3条件を満たさない場合でもACRAと相談することで許可されることもありますので、必要な場合には連絡をお勧めします。
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