国際ビジネスハブとして法的なインフラも整えるシンガポール、紛争のタネとなりやすい商標についても、世界最高水準の保護が与えられるよう努力がされています。
今回は、簡単にビジネスにおける商標の意味を確認しながら、シンガポールにおける商標の扱いについてお伝えします。
目次
商標って大事?
商品やサービスが複雑化する中でも、人々に認知されるのはまず名前、そしてデザインされた図です。
目で見て、耳で聞くことのできる商品名/サービス名のほかに、一般の人に一目で認識してもらえるよう、固定された図案が用いられるのが通常です。
この商標が他者に用いられた場合、消費者は全く違う内容の商品/サービスでも同一のものとして認識し、本来存在するはずの便益が得られなかったり、被害を被った時、その他者のために、自分の名声や商品/サービスの評判を著しく損なう恐れがあります。
この時、国の機関に登録してあれば、自分の商品/サービスが不当に傷つけられたと訴えを起こすことができます。
更に、その訴えができるという事実によって、他者に自分の商標を利用させないという抑止力になると考えられます。
従って、有力な商品/サービスであればあるほど、証憑を政府機関に登録し、自分で保護を与えるようにすることが推奨されます。
どうやって商標を保護する?
それでは、いざ商標を保護しようと思ったときに、シンガポールはどのような制度を設けているでしょうか。
商標は、シンガポール知的財産局IPOS(Intellectual Property Office of Singapore)というところが管理しており、商標法(Trade Marks Act)という法律に基づいて規則を設けています。
具体的には、オンラインツールなどを通して個人や企業、団体の知的財産を登録し、同じ商標、類似した商標で商品/サービスを販売しようとしている人が他にいた場合、その人の商標登録を却下し、またその使用に差し止めを求めるような活動をしています。
商標は国際的な取り組み?
ビジネスの国際化が進む現在、商標の重要性は特に国際的に展開するビジネスで高まっています。
しかし、各国が法的な権力を行使できるのが自国の範囲内に過ぎないことから、商標登録についても原則一か国ごと登録していくことが求められます。
シンガポールのIPOSでは、その煩雑な手続きの反省に立って、以下三つの手続きに取り組めるよう国際協力を強化しています:
- シンガポール国内の商標登録
- シンガポール国外の商標登録
- 国際組織経由の商標登録
この中、シンガポール国外の商標登録は、直接当該商標登録希望国の商標当局で手続きする以外に、マドリード協定議定書(=マドリード・プロトコル、マドプロとも)の締約国であることを利用して、国際団体WIPO(World Intellectual Property Organisation世界知的財産組織)に商標登録を行う方法があります。
マドリード協定議定書に従って行うのが国際組織経由の登録方法でもありますが、実際にはその国際商標登録を行った上で、対象の国でも確認を行う手続きが発生する点に注意が必要です。
商標の分類も国際基準
商標登録は国際的にニース国際分類(Nice Classification)によって規定されます。
商品とサービスをそれぞれ1~34、35~45の合計45に分類、それぞれ一つずつ申請が必要ということになっています。
このニース国際分類は概ね5年に一度更新されることになっており、シンガポールもこれに従って分類した上で商標を登録する制度を持っています。
登録の流れ
シンガポールでの商標登録は、上記分類に基づいて出願した後、以下の工程を経て登録されます:
- 方式審査
- 実体審査
- 商標登録出願公告
- 登録証発行
それぞれ、審査には2か月~4か月の時間を要し、問題なしとされれば先に進み、問題があるとされれば是正が求められ、対応できなければ申請取り下げになる、という流れになります。
出願公告の日から2か月以内に異議申し立てが行われなければ登録証が発行されることになっています。
なお、登録機関は10年ですが、10年ずつ何度でも延長することができ、都度申請料を払うというものです。
既に他者に使われている場合
シンガポールで使用したい商標、またシンガポールで登録した上で、他国で使用したい商標が、既に他者により登録されている場合は、以下のように確認作業を進めます。
まずは、上記ニース国際分類で見て本当に自分の商品/サービスとして使えないか確認します。
自分の登録したい分類番号での登録がないのであれば、そちらに自分の商標を登録して使用することができる可能性が高いです。
一方、自分の登録したい分類番号での登録がある場合には、残念ながら原則として当該他者の登録が取り消されるまで、自分のものとして使用することは難しくなります。
別の商標を考えて、そちらで登録、新たにブランドを構築することになるでしょう。
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近藤貴政
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