シンガポールのワンタイム個人認証サービスSingPassから発展して、企業の政府関連サービスのログインに用いられるようになったCorpPass。2018年9月からは、殆どのサービスでCorpPassがなければサービス利用もできない環境になっています。
今回は、シンガポールで法人などを運用する上で避けては通れないこのCorpPassについて、少し細かくお伝えします。
目次
まずは基本を確認!
シンガポールの政府サービス、代表的なものと言えば、企業会計規制庁ACRA(≒登記局)、内国歳入省IRAS(≒税務署)、人的資源省MOM(≒労基署)などが一般的ですが、それ以外にもシンガポールにおけるビジネスライセンスなどを管理するGoBusiness、特許などを所轄するIPOSなどの各政府機関には、個々の企業のアカウントが設けられる形で運営されています。
こうした企業ごとのアカウントは機密情報も含むため、他社からアクセスできないよう、パスワードで管理する必要がありました。
しかし、パスワードだけではそれを見られた時点で登用されてしまうリスクがあるため、CorpPassではSingPassと同じく、携帯電話番号に向けて発せられるSMSにワンタイムパスを送って照合することにより、本人以外ではログインできないようにされました。
このワンタイムパスワード受信用の電話番号は、シンガポール国内の番号である必要があり、長期の電話番号保有には一般的に就労許可が必要になることもあって、原則的には就労許可(EP、S-Passなど)の発行を受けた外国人しか利用はできないものとなっています。
入力する情報は、該当のシンガポール企業の固有識別番号UEN、および個人で定めるIDとパスワードの3つです。
ログイン画面でこの3つを入力すると、ワンタイム認証の画面になり、それを終えればログインが完了します。
ワンタイム認証が変わった?
2019年から、SingPass Mobileというアプリの運用が始まりました。
これは、それまでSMSで送られてきていたワンタイム認証用の6桁の数字に替えて、スマートフォンの端末で信号を受け取り、固定の暗証番号入力か顔認証でログインするものです。
数字を入力する手間も省け、比較的スムーズな対応がされていると言えます。
権限を選択
CorpPassの大きな特徴は、各種の政府系サービスのアクセスを、様々な形で付与、制限することができる点にあります。
例えば、税務のサービスを利用する場合、シンガポールでは全てオンラインサービスMyTax Portalにログインすることになりますが、税額を計算して打ち込む担当者と、その金額を確認して承認する責任者が異なる場合があります。
それぞれがログインできるよう、Userとしてのアクセス権限を付与される一方、一人は記入者Preparer、もう一人は承認者Approverとすることで、後者のみに深刻を完了させる権限があるように設定することができます(Approverは記入・編集もできます)。
また、Userはサービスの利用しかできませんが、CorpPassのUserアカウントを誰かに付与したり、設定を変更したりする権限も、Sub-Adminというランクであれば付与されます。
この点、CorpPass内で最も上位のランクはAdminなのですが、AdminとSub-Adminはほとんど権限に違いがないくらい、全般的に会社のサービスを利用することができると言えます。
外部の人でもアカウントが作れる?
アウトソーシングの一般化したシンガポールでは、CorpPassでアクセスする各種サービスについても外部の人間に委託することが多くなっています。
この点、本来は会社の内部の人間にのみ権限を付与する目的で作られたCorpPassも、柔軟に対応しており、通常はThird Party Authorisationというオプションで、会社単位で一定のサービスにアクセスする権限を付与できます。
また、外部の人間でも、会社のAdminによりアカウントが作成されれば、当該会社のサービスについて、User~Sub-Adminの権限までは即日付与することができます。
ただし、EP On Line(現MyMOM Portal)などのサービスへのアクセス権限を外部の人間に付与する場合、CorpPass上だけでなく、MOMに対してAuthorisation Letterを発行して委託関係を明確にすることが求められます。
Adminの権限と制限とは
CorpPassのAdminは、Sub-Adminの任命も含め、CorpPass上のすべての機能にアクセスすることができます。
制限として、一つの法人につき、Adminのアカウントは2つしか存在できず、かつそのアカウントはシンガポールの会社登記簿に当たる、ACRAのBizFileに名前が記載されたDirectorやSecretaryの役職の人しか就任することができないとされています。
Adminになるには?
CorpPassのホームページの最初に存在する「Register as a CorpPass Admin」のボタンをクリックし、SingPassでログイン、個人の情報を入力して登録することが必要になります。
このため、シンガポールの居住者として有効なSingPassをもっていない方については、例えDirectorとして会社登記情報に名前が記載されていたとしても、Adminになることはできません。
現行のAdminやSub-Adminの権限でも、Directorとして登記されている方をCorpPassのAdminに指名するということはできず、必ずホームページから登録する必要がある点に注意しましょう。
なお、シンガポールに法人を設立してすぐにCorpPassアカウントが必要になる際には、通常会社秘書役に依頼してアカウントのアクティベートをしてもらいます。
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