雇用法の就業規則

労務

シンガポール駐在員の和久井です。

シンガポールでの労働法はどちらかといえば企業側に有利な内容となっているのが特長的です。例えば、規定上最低賃金の定めがされておらず賃金設定は自由です。また解雇が自由に行える(事前の通知を出すことが前提ですが、解雇の正当な理由は無くても良い)点や、雇用法が適応されるのが一部の労働者であるため、適応外となる労働者が多いところに特長があります。適応外というのは例えば、雇われ社員であったとしても、経営的責任を負う管理職に就く方は雇用法で対象外とされていますし、残業代となるとさらに限定的なもので、一般労働者月収2,000SGD以上への残業代の支払い義務というのはなくなります(肉体労働者は4,500SGD以上であれば義務はありません)。つまり2,000SGD以上得ている営業職や事務職などに就く場合は残業代は会社の規定に寄るものとされ、それを払わない企業もあり得るということです。ただし、実務上それで納得する労働者は少ないが故、残業代が支払われないなら働かないといった形で辞める自由ももちろん労働者側も出てくるため、労働法で義務とされていなくとも、残業代を支払うのが適切として会社が任意で支払っているのが一般的です。

また雇用問題になってストライキや裁判が起こるケースがなぜ少ないのかというところですが、とある人材会社によると、お金と時間が掛かるからとのこと。不満があれば、よりいい賃金の会社へ転職する。失業率2%の国ならではの自由な考え方です。また低賃金労働者は会社に訴える弁護士費用も払えない、余裕がないといった状況であれば起訴は行えません。ただし、そうした労働者の訴えを放置されるわけではなく、シンガポールは政府機関サポートデスクとしてMOM(人材開発省)が間に入って仲介として解決に導く役割を果たしています。不満やクレームはMOMが受け持ち、企業側に注意を促すという流れになり、問題が起きる前のワンクッションを置いているというのが特徴となります。

また雇った人材との争いや定着率を保つといったためにも企業側は就業規則を作るなどしてある程度の福利厚生、例えば保険、研修制度、有給休暇、交通手当て(シンガポールは交通費は支給しないのが特徴です)などを設けるとされるのが理想です。就業規則Handbookの作成は義務とされていませんが、雇用法に適応されない労働者に対してこうした規則や雇用契約書が重要となります。これらを明確にすることで、企業の社員に対する価値観が現として、社員も会社選びの指標代わりとなるので重要な部分とされます。会社選びも賃金基準といったところではなく、シンガポールは働きやすい会社を選びたいといった根本的なところで賃金以外のところを重要視する傾向が多いようです。

以上

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2019-10-23

東京コンサルティンググループ

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